2005-05-01から1ヶ月間の記事一覧

専門的知識提供への対価

東京日帰り出張の岐路、羽田空港で書いている。モノレール車中で、「おわび」と題する次のようなメールを受け取った。 ○○○の話は、□□版の本日夕刊に掲載されたのですが、スペースの関係で矢原先生のコメントは入らなくなってしまいました。 お手数をおかけし…

論文を書く時間をどうやって確保するか?

昨日のセミナーでは、今年の研究計画を話した。教官としても、研究者としても、手を抜けない仕事である。パワーポイントの準備に、午前2時ころまでかけた。 研究計画をたてるうえで、重要な事項をまとめてみよう。 (1)研究の狙いが鮮明であること。言い換…

研究計画を考える

今日は、新キャンパスに調査に出かける。森林をブロックに分割して移植した場所の経年調査である。4年目の調査であり、これまでの傾向を分析して、今後の方向を考えなければならない時期である。明日は、セミナーで研究計画を発表するので、昨夜からパワーポ…

専門馬鹿がなぜ悪い?

「理系白書」の元村さんの活躍には敬意を払っている。しかし、5月26日のブログには、大いに不満がある。 元村さん、曰く。 文系の理系音痴を言うのと同じく、理系の「専門馬鹿」(他の専門分野に疎い、無関心)は問題ではないか 理系人の社会リテラシーは十…

マンガ「種の起源」

講談社サイエンティフィクから書籍小包が届いた。新刊の献呈本らしい。小包を開けてみると、なんとマンガが入っていた。マンガの紹介をアップロードした直後のことだ。タイミングが良すぎるなぁ。 田中一規「マンガ 種の起源」 講談社;1400円+税;ISBN:406…

ラスト・ブックマン

父祖より受け継いだ万巻の書物を守る「文守り」(ふみもり)の館に、雷鳴が光る。館を脅かすのは、ネット産業「調和社」の凄腕エージェント、台宮司だ。崩れ落ちる館から、小型機で脱出をはかった文守りだが、機内に先回りした台宮司の手にかかり、絶命する…

大学生へのブックガイド

大学生にもっと本を読んでほしいという願いをこめて、2冊のブックガイドがあいついで刊行された。次の2冊である。同じ願いを持つ大学教官として、これら2冊を手にとってみた。 教養のためのブックガイド 小林康夫・山本泰(編) 東京大学出版会;1600円+税;…

学振申請を終えて

今日は、大学教員としてまっとうな一日を送った。午前中は、研究室見学者と面接。続いて10時から、大学院生・ポスドクとプロジェクトミーティング。午後は研究室のセミナー。夕食前は、卒業研究生3名に「教育的指導」。夕食後は、M1の大学院生の相談にのり、…

達人が語る達人への道

千住博『千住博の美術の授業 絵を描く悦び』 ISBN:4334032478 光文社新書 分野が違っても、達人の言葉には普遍性がある。画家として独自の世界を築いた著者の言葉には、科学者にも通じる真理が含まれている。本書は、著者が京都造形芸術大学で学生の作品を目…

千住博の襖絵

出勤し、新キャンパスの生物調査に出かけようと車の鍵を手に取ったが、体が重い。休養が必要と判断し、車の利用予定表の名前を消し、帰宅して昼寝をした。久しぶりに、寝不足を解消した気がする。やはり、たまには休養が必要である。 休みついでに、福岡アジ…

奨励賞審査

今日は、朝から九州大学東京オフィスにこもり、ある学会の奨励賞候補者の応募書類を読んでいる。さまざまな分野から選りすぐられた候補者の研究業績を評価する仕事である。大変であるが、この仕事は楽しい。さまざまな分野の最先端で、どのような研究が展開…

九大新キャンパスの生物多様性を誰が守るのか?

この問題に関連して、Ostromさんから、長文の質問が寄せられました。九大新キャンパスでの生物多様性保全事業に関心を持っていただき、ありがとうございます。 新キャンパスにおける保全緑地の管理体制については、3月に私が所属する緑地管理ワーキンググル…

今津干潟の総合研究

九大新キャンパスのすぐそばに、今津干潟という河口干潟がある。毎年冬には、クロツラヘラサギなどの希少な渡り鳥が渡来するので、バードウォッチャーには有名な場所である。鳥以外にも、カブトガニや絶滅危惧種の貝類が棲息している。全国的に見て、貴重な…

法人化と健康管理

国立大学が法人化されて、1年あまりが経過した。この間、良くなったと感じたことは一度もなかった。年度末に予算を使い切らなければならない悪習はいっこうに改善される兆しがないし、予算も定員も私の予想どおり減らされている。仕事は確実に増えた。 希望…

沖縄科学技術大学院大学(仮称)整備事業地は絶滅危惧生物の宝庫

昨日から滞在している琉球大学で、「沖縄科学技術大学院大学(仮称)整備事業に係る環境影響評価方法書」の公告・縦覧が、5月9日から実施されていることを知った。意見提出の期限は6月21日である。事業地は恩納村、事業規模は222ヘクタール、造成面積は造成…

Duncan J. Watts

ブキャナンの本で、「数学者」と書かれていたので、その表現に従ったのだが、「通りすがり」さんからコメントがあったので、彼の経歴について調べてみた。Natureに掲載された”Collective dynamics of 'small-world' networks”と題する論文には、ワッツとスト…

 複雑な世界、単純な法則

マーク・ブキャナン著 阪本芳久訳 複雑な世界、単純な法則 ネットワーク科学の最前線 草思社;2200円;2005/3/3;ISBN:794213859 憎らしいくらい、うまく書かれた本だ。科学の普及書を書くなら、このくらい面白くストーリーを組み立ててみたい。しかも、本書…

べき乗則

5月8日のブログに対して、「一若手教員」さんから、「博士の研究能力モデルの計算ですが、重点化前後で、研究能力の分布が、同一のしかもパラメータが1個しかない単純な分布に従うという前提条件は受け入れ難いです。」というコメントがあった。今日はこの…

科学は豹変する(続)

相の島に到着。船の中で、本の後半(養老・和田対談)を読んだ。 私の予想に反して、対談の後半では、二人のやりとりは見事に噛み合っていた。 まずは、『顔』が大事だという点で意見が合う。 和田さんが、「東大で見られる顔は面白くない、人間味がない。そ…

科学は豹変する

養老 孟司, 和田 昭允(著) 『科学は豹変する』 培風館 ; ISBN:4563019097 ; (2005/04); 1500円+税 昨日、授業のために出かけた六本松キャンパスで購入。通勤中に、前半を読んだ。 日本生物物理学会が市民のために開催したシンポジウムでの講演と討論が下…

「研究協力者」の質と規模

OD

Josepoohさんから、「教授の立場から見た時の研究協力者の質・規模」について、「分野毎に温度差がある」のではないかというコメントがありました。 非常に大雑把な区分けですが、 (1) 多数は不要(というかむしろ邪魔)な分野 (2) 多数必要であるが、必ずし…

あさ/朝

前日の豪雨とうってかわり、屋久島調査の最終日は、快晴だった。朝の空はどこまでも青く、照葉樹林の燃え立つような新緑とのコントラストがまぶしかった。 その屋久島から戻って、この本『あさ/朝』を手にした。谷川俊太郎の詩と、吉村和敏の写真で、朝の訪…

オーバードクター問題:資料へのリンクの追加

OD

大学に戻り、nqさんが紹介してくださった「第3期科学技術基本計画の重要政策(中間とりまとめ)」(平成17年4月:文部科学省科学技術・学術審議会基本計画特別委員会)をざっと見た。以前に目を通したことがあるが、確認したい点があった。研究者のポス…

オーバーポスドク問題:学位取得者の質は低下しているか?

OD

この問題に対する現状認識は、オーバーポスドク対策について合意形成を行う上での一つのキーポイントだと思う。一若手教員さんは、母集団の増加によってトップレベルの研究能力は伸びたが、平均値は低下しているだろうというご意見。hhayakawaさんは、優秀層…

オーバー・ポスドク問題:文献紹介

OD

私がK大の学生だったころ、大学院ではオーバー・ポスドク問題が深刻化し始めていた。「OD牧場」と呼ばれる研究室もあり、そのような研究室では学位をとっても職につける希望はほとんどなかった。学位は、「足の裏の飯粒」と呼ばれていた。取らないと気持ちが…

オーバーポスドク問題:現状認識についての論点

OD

たくさんのご意見をありがとうございました。昨夜は、コメントに目を通し、考えをめぐらすだけで終わってしまいました。これから私の意見を述べていきますが、できるだけコメントに応える形をとりたいと思います。大きく分けて、「現状認識」の問題と、「今…

オーバー・ポスドク問題についての情報(続)

青木太一さんが紹介してくださったブログ「博士が100人いるむらのオチはマジなのか?」には、「博士が100人いるむら」のソースデータと思われる統計や、文部科学省の報告書「博士課程修了者の就業構造に関する日米比較の試み」など、有益な情報源へのリン…

オーバー・ポスドク問題についての情報

文部科学省の調査によれば、2004年度のポスドクは1万2500人に達したそうだ。2003年度は約1万200人だったので、1年間で約2300人も増えていることになる。年齢別では約8%が40歳以上で“高齢化”が進んでいる。 「寄生虫ひとりがたり」…

オーバー・ポスドク問題

OD

「理系白書ブログ」5月4日の記事に対して、次のようなコメントをした。 次期の科学技術基本計画では、増産したポスドクへの対応策は盛り込まれるのでしょうか。理系の大学院生の間で、「はくしが100人いるむら」が話題になっています。この状況が続けば、…

「竹取の翁」の年齢のなぞ

「竹取物語」の結びの部分には、「齢五十なる翁」という表現がある。私は5月1日で51歳になったので、とうとう「竹取の翁」よりも年をとってしまったことになる。 しかし、「竹取の翁」の年齢には、なぞがある。実は、物語のはじめには、「齢七十なる翁」と紹…