研究

生物多様性観測のこれから

ハノイで開催された第10回GEOSS-APシンポジウムの3日間の日程を終えました。昨日は、生物多様性・生態系のセッションの議長を終日つとめ、今日は全体会議で2回ステージに登壇し、一度目は昨日のレポート、二度目はパネラーをつとめました。 今回は、中国が…

熱帯雨林ではなぜ葉が大きいか?

この問題について調べた論文が、サイエンス誌に発表されました。 http://science.sciencemag.org/content/357/6354/917.full 葉の大きさの世界的傾向を分析した論文。私が学生のころにGivnishが先鞭をつけた研究が、世界規模のデータ解析で実を結びました。…

フューチャー・アースについての紹介記事

JBpressに以下の記事が公開されました。 地球の未来をかけた科学者たちの挑戦 「超学際」と社会のトランスフォーメーションに向けて http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/47647 今回の記事は、Future Earthという新しい国際科学プログラムの背景とビジョン…

日本学術会議Future Earth講演会(ツイートのまとめ)

基調講演一人目は、毛利さん。「地球の危機」というのはおかしいですよね。危機に面しているのは人間。ポイントは3つ。地球の新しい認識、学術の新しい役割、実践活動。(ゆっくりした、無駄のない話し方は、好いですね。) 6人乗りの宇宙ステーションとそこ…

多様性の潜在力-ツイッターに書いたメモのまとめ

熱帯生態学会公開シンポジウム:多様性の持つ潜在力、スタート。まず百村さんによる趣旨説明。日本語で「多様性」をググると生物多様性>組織多様性、英語でdiversityをググると、人間の多様性についての記事が多い。これは面白い視点ですね。 日本では2008…

屋久島での卒研指導

屋久島入りしてから4日が経過しました。「ヤクシカの嗜好性と形質の関係」「ヤクシカ摂食の森林更新への影響」「アブラギリの分布拡大」という3つのテーマで、3名の卒研生が調査を進めています。調査経過はきわめて順調。諸般の事情で、梅雨の真っただ中…

スマトラ調査終了

スマトラ・パダン市東にあるガドゥ山での調査を終えて、今夜9時25分ジャカルタ発成田行きの夜行便で帰国します。ガドゥ山は、約30年前に京大の川村さん、堀田さんらが研究を開始され、それ以後日本人研究者によって連綿と調査が続けられてきた場所です。植物…

ずばぬけて高いスマトラ熱帯林の植物種多様性

えびの高原での野外実習も4日目を終了。森林植生班とマルハナバチ班の指導をしている。森林植生班では、熱帯アジアの調査で採用している100m×5mのトランセクト調査法を使って、樹種の垂直分布と多様性のパターンを比較している。スマトラ熱帯林を見てきた直…

論文原稿

私が忙しすぎるために、論文原稿の投稿・再投稿が遅れがちになっている。これは教育者・研究者としてゆゆしき事態だと自覚しているのだが、会議参加中はやはりほとんど時間が割けなかった。移動中の待ち時間や、機内のほうが、改訂作業に集中できる。さきほ…

スラウェシ島調査

土曜日の夜にボゴール(インドネシア)に到着した。今日の13時55分のフライトでマカッサルに飛び、明日からはスラウェシ島で植物多様性の調査をする。雨季なので、ボゴールでも小雨がしとしと降っている。私は晴れ男だが、今回ばかりは、雨に降られることを…

書き初め

年末年始は、紅白も、箱根駅伝も無視して、論文原稿の改訂作業に専念した。その論文を、第一著者のT君が今日投稿した、「カンボジア、カンポントム・カンポンチュナン省の永久調査区における樹木の分類」と題する、植物分類学の論文だ。本格的な植物分類学の…

国際マメ科多様性アセスメント計画始動

19−22日の4日間、「国際マメ科多様性アセスメント」に関するワークショップを主催した。海外から、非常に強力なメンバー13名を招聘し、日本発のプロジェクトがスタートした。21−22日の午後は、計画についての討論にあてた。海外の論客を相手に、正味まる一日…

Possingham博士来訪

12日には、オーストラリア・クイーンズランド大学のHugh Possingham博士が九大を訪問してくださったので、グローバルCOE国際セミナーを開き、大学院生2名にも話してもらった。 Possingham博士は数理生物学者である。私が彼の仕事を最初に参照したのは、大橋…

状態空間モデルによるトップダウン効果とボトムアップ効果の解析

深澤さんの講演が終わったところ。深沢さんも状態空間モデルを使って、奄美大島のネズミ類(外来種のクマネズミと絶滅危惧の在来種)に対するトップダウン効果(マングースによる捕食)とボトムアップ効果(人為的な土地改変、どんぐりの豊凶)の効果を解析…

一般化状態空間モデルによるニホンジカ個体群動態の推定

飯島さんの話が終わったところ。「一般化状態空間モデル」に階層ベイズ法を適用し、密度・捕獲圧・森林率・草地率などの要因の効果を検定した研究。とても勉強になった。屋久島のシカ管理にもぜひ使わせていただきたい。 山梨県のデータを解析した結論:密度…

『野生動物の空間生態学の新潮流−解析から管理まで』研究会

グローバルCOE「自然共生社会を拓くアジア保全生態学」(東京大学グループ)主催の研究会をスカイプで中継し、九大のスタッフや大学院生で聞いているところ。 14:00 開会のあいさつ 14:05 分断化した森林におけるアカゲラの個体群維持機構 森さやか(国立科…

アジア保全生態学センター設立記念シンポジウム終了

センター設立を構想してからほぼ10年。多くの方々のご協力を得て、昨日、その夢をかなえることができました。このセンターをさらに育てていくために、精いっぱい頑張りたいと思います。 プロジェクト予算にもとづくセンターなので、存続のためにはプロジェク…

九州大学アジア保全生態学センター設立

来る5月1日に、九州大学アジア保全生態学センターが設立される。私には「アジア保全生態学センター長を命ずる」という人事通知が届いた。過去10年あまりの努力が、やっと実った。 九大では、生態学だけでなく、昆虫分類学、森林水文学、森林計画学、応用生態…

DIVERSITAS科学委員会初日

DIVERSITAS(生物多様性国際研究プログラム)科学委員会に出席している。今日は2日目。 昨日(初日)は、4つのコアプロジェクトと、4つの分野横断ネットワークからの報告に加えて、ICSU(国際科学会議)から「グランドチャレンジ」文書に関する説明があり…

スミレの木

オランダ国立植物標本館(ライデン)で、カンボジアの植物標本の同定作業をしているT君から、最新の同定結果が届いた。花があるのに科もわからなかった上記の写真の植物は、Rinorea anguifera (Lour.) OK. というスミレ科の木本だった。このようなスミレ科の…

ライデン訪問の成果

ライデンに訪問した3日間に、カンボジアの樹木種の同定作業を、T君と一緒に進めた。"Taxonomy of trees in permanent plots of Kampong Thom and Kampong Chhnang Provinces, Cambodia"と題する論文草稿の準備も始めた。T君には、分類学的な文献の探し方、使…

待望のライデン訪問、分布モデルの重要性

三元日は、大量の書類を読んで過ごした。何とか今日で、ある用件に片がついた。しかし別件で、あと一箱ほどの書類を読まなければならない。 さきほど、短い原稿を書いて、メールで送信した。このほかに、急ぎの原稿が少なくとも2件、あずかっている論文原稿…

気候変動の下での適応進化

昨日まで3日間、「気候変動に対する種分布域の反応の理解・予測への生態・進化学的アプローチ」("Eco-Evolutionary Approaches to Understanding and Predicting the Response of Species Range to Climate Change")というワークショップを開催した。パリ…

国際マメ科植物多様性観測計画ウェブサイト

「国際マメ科植物多様性観測計画」の提案については、Jeff Doyleをはじめ、マメ科の指導的研究者の賛同も得られた。少し改訂をくわえた提案文書を下記のウェブサイトに掲載した。 http://seibutsu.biology.kyushu-u.ac.jp/~yahara/GaLuDA.html 日本発の国際…

国際マメ科植物多様性アセスメント計画

24日にバリ島から帰国した。バリ島では、インドネシアの森林生態学に関する会議(16-19日)、DIVERSITAS bioGENESIS科学委員会(19-20日)、ATBC(熱帯生物学・保全学会)大会(20-23日)をハシゴした。3つの会議を通じて、「国際マメ科植物多様性アセスメ…

栄養成長と抵抗性の顕著なトレードオフ

3週間先の予定を急遽変更して、21日のセミナーで論文紹介を担当することになった。ちょうど、以下の論文を読んで興奮していたところなので、迷わずこの論文を紹介することに決めた。紹介する論文: Todesco M et al. 2010. Natural allelic variation underl…

ヒトとネアンデルタール人の交雑についてのより強力な証拠

ネアンデルタール人ゲノム解読プロジェクトを進めているマックス・プランクのチームによる最新の研究成果がサイエンス誌に発表された。その結果は、ヒトとネアンデルタール人が交雑していたことを示唆している。 研究チームのウェブサイト(http://www.eva.m…

シロイヌナズナはどうやって自家和合になったか?

Ever since Darwin・・・一度でいいから論文の最初にこう書いてみたいものだ。この書き出しではじまる土松君の論文が、あのNature誌に発表された(現時点では、オンラインで)。 http://www.nature.com/nature/journal/vaop/ncurrent/full/nature08927.html …

生物多様性分野の戦略研究開発プロジェクト

カリフォルニアでのGEOBONアシロマ会議から27日に戻り、大詰めの卒論指導・クロツラヘラサギ国際シンポの講演準備などをこなしつつ、地球環境研究総合推進費の交付申請書を準備し、4日の提出しめきりに何とか間に合わせた。国内・国際ワークショップの参加者…

ヤッコソウの果実

12月も分刻みのスケジュールが続いている。 → http://seibutsu.biology.kyushu-u.ac.jp/~yahara/schedule/schedule2009nen12.htm 18日は、屋久島を日帰りした。午前中は屋久島生物多様性保全協議会の全体会議、午後は屋久島世界自然遺産科学委員会。せっかく…