オーバー・ポスドク問題についての情報(続)

青木太一さんが紹介してくださったブログ「博士が100人いるむらのオチはマジなのか?」には、「博士が100人いるむら」のソースデータと思われる統計や、文部科学省の報告書「博士課程修了者の就業構造に関する日米比較の試み」など、有益な情報源へのリンクがあって、役に立ちます。ご紹介いただき、ありがとうございました。
統計上の「不明」がかりに「自殺」だとしても、自殺率がポスドクで高いかどうかは、他の職種や年齢層と比較しなければ結論できないという指摘は、重要なポイントだと思います。このような「率」の使い方は、統計でウソをつく方法の初歩ですね。
学位取得者を増やす必要があるという結論が書かれた大学審議会答申でも、この方法が使われました。人口千人あたりの学位取得者率は、当時の日本では、欧米よりずっと少ないということが、博士号取得者を増やす必要性の論拠とされたのでした。この「人口千人あたりの学位取得者率」は、ロースクールビジネススクールなどのPh.Dも含めたものでした。理系だけなら、大学審議会答申が出た時点で、日本は欧米と肩を並べていたのです。
その後の「大学院重点化」「博士課程定員拡大」「ポストドクター等1万人支援計画」などにより、日本の理系学位取得者率は、世界でトップになったはずです。
なぜ生態学など国策に関係のない分野まで増やしたかというと、雇用形態を流動化したいという産業界の意向と、「大学院重点化」に乗り遅れたくないという大学教官側の意向が、同じ方向を向いたためでしょうね。
現在の事態を招いた大学関係者の責任は大きいと思います。「国にそれを期待する前に,ポスドク本人や教官がやるべきことはありませんか?」というメイデーさんの指摘には、反論の余地はありません。だから、この問題の解決に向けて、議論をおこそうと思うのです。