飛沫感染・空気感染・エアロゾル感染の基準のあいまいさ

飛沫=飛沫粒子=droplets, エアロゾルaerosols=エアロゾル粒子aerosol particlesという用語の使い方について襟を正したうえで、飛沫感染・空気感染・エアロゾル感染の基準のあいまいさについて、私が理解していることを書きます。もし間違いがあればご指摘ください。この記事を書く理由は、昨年2月以来、新型コロナウイルスに関する情報発信を続けており、科学者としてこの行為を続ける以上、間違いがあってはならないからです。以下に書く記事は私の理解を公開検証するためのものなので、検証以前の記事だということをご了承のうえでお読みください。とはいえ、私なりに論文を読んで、調べたうえで記事を書いています。

昨年2月に新型コロナウイルスに関する論文を読み始めてすぐに気づいた疑問がいくつかあります。

(1)飛沫感染と空気感染を分ける基準として、粒子径5μmが用いられているが、これは妥当なのか?

WHOでは、径5μm以上の飛沫粒子dropletsによる感染を飛沫感染droplet transmission、径5μm未満の「飛沫核」droplet nucleiによる感染を空気感染ariborne transmissionと定義しており、多くの論文でこの基準が引用され、また引用なしで採用されています。飛沫核は飛沫粒子から水分が蒸発した状態のことです。径5μm未満だとすぐに水分が蒸発して飛沫核になると説明されていますが、本当にそうなのか? 論文を調べ、エアロゾルに詳しい友人にも尋ねました。結論として、水分を保持した径5μm未満の粒子は存在するようです。「ようです」とあいまいなことしか書けないのは、このことを証拠だてる論文はまだ確認できていないからです。私の調べ方が足りないのかもしれませんが、努力した範囲では発見できませんでした。この点に関連して、以下の疑問が浮かびました。

(2)新型コロナウイルスは空気感染しない、というのは本当か?

論文を調べてみると、インフルエンザウイルスは径5μm以上の粒子にも含まれることがあり、これらの粒子による感染が生じるという証拠がいくつも発表されていました。これらの論文では、エアロゾル感染aerosol transmissionという用語が使われています。たとえば以下の論文:

Cowling BJ et al. (2013)  Aerosol transmission is an important mode of influenza A virus spread. Nature Communications 4:1935.

この論文では、まず古典的な径5μm基準が書かれています。

A distinction is typically made between larger droplets that are believed to settle to ground within 1–2 m, versus smaller droplet nuclei particles with aerodynamic diameter below 5 μm that can remain airborne for longer periods but may desiccate quickly, depending on environmental conditions.

そのうえで、

These latter particles are also referred to as aerosols and retain infectivity.

と書かれ、論文のタイトルのようにAerosol transmission という用語が使われています。この定義では、Aerosol transmission =空気感染airborne transmissionです。そして、飛沫感染エアロゾル感染(空気感染)の比率はほぼ半々だろうという結論を下しています。

このような論文が出ているので、新型コロナウイルスについてもエアロゾル感染(空気感染)が起きるのではないかと考えました。しかし当時はエアロゾル感染(空気感染)の可能性は低いという見解が専門家から発表されていたので、非専門家の私がそれに異をとなえる発信をすることは控えました。

一方で、もうひとつの疑問が生じました。

(3)径5μm以上の粒子はエアロゾルではないのか?

径30~40μmくらいの花粉でもエアロゾル化しますので、径5μm未満という基準より大きな粒子でも、かなり長時間空気中を漂うのではないかと思いました。この疑問については以下の論文である程度解決しました。

Teiller R (2009) Aerosol transmission of influenza A virus: a review of new studies. J. R. Soc. Interface 6, S783–S790.

The settling velocity in still air can be calculated using Stokes’ law (Hinds 1999); for example, a 3 m fall takes 4 min for a 20 μm particle (aerodynamic diameter), 17 min for
10 μm and 67 min for 5 μm.

ここに、径5μmの粒子は67分間空気中を漂うという計算結果が書かれています。67分間空気中を漂う粒子ならエアロゾル粒子とみなしてよいのではないか、と考えて読み進むと、以下の記述がありました。

There is essential agreement that particles with an aerodynamic diameter of 5 mm or less are aerosols, whereas particles >20 μm would be large droplets. Some authors define aerosols as <10 μm or even <20 μm (Knight 1973; Treanor 2005); particles between 5 and 15 to 20 μm have also been termed ‘intermediate’.

要するに、飛沫粒子とエアロゾル粒子の区別は基準次第ということです。最近発表された以下の論文(IDAさんにもご紹介いただいた論文)では、<100 μmをエアロゾル、これより大きいものを飛沫粒子dropletsとしています。

Wang CC et al. (2021) Airborne transmission of respiratory viruses. Science 373: eabd9149

私には、以下の取り扱いが妥当に思えます。

Gralton et al. (2011) The role of particle size in aerosolised pathogen transmission: A review. Journal of Infection 61: 1–13.

This indicates that expelled particles carrying pathogens do not exclusively disperse by airborne or droplet transmission but avail of both methods simultaneously and current dichotomous infection control precautions should be updated to include measures to contain both modes of aerosolised transmission.

邦訳:このことは、病原体を運ぶ排出された粒子は、空気感染か飛沫感染かのどちらかだけで拡散するのではなく、両方の方法を同時に利用していることを示しており、現在の二分法による感染予防策は、エアロゾル化した感染aerosolised transmissionの両方のモードを抑制する対策を含むように更新されるべきである。

この論文は、空気感染も飛沫感染エアロゾル化した粒子による感染であるという理解の下で、空気感染と飛沫感染の二分法は適切ではないと主張しています。

私が「飛沫はエアロゾル」という言い方をしたのは、この考えにもとづくものです。正確には「従来飛沫粒子と呼ばれてきたものはエアロゾル化した粒子である」という意味です。Wang CC et al. (2021) の<100 μmをエアロゾルとみなす定義だと、会話や咳で口から出る粒子のほとんどがこの定義を満たすので、Gralton et al. (2011) と結論はほぼ同じです。

会話や咳で口から出る粒子のサイズ分布についてはいくつも研究がありますが、

Chao et al. (2009) Characterization of expiration airjets and droplet size distributions immediately at the mouth opening. Aerosol Science 40: 122–133.

によれば、口から出る粒子の大部分は100μm未満です。Chao et al. (2009) はこれらの粒子に対して飛沫粒子dropletsという用語を用いていますが、Wang CC et al. (2021) の定義だとエアロゾルです。

結論として、口から出る粒子の大部分を占める100μm未満の粒子を、飛沫粒子と呼ぶかエアロゾルと呼ぶか、それは定義次第です。会話や咳で口から出る粒子を含んだ気体がエアロゾルであり、その中には大小さまざまな粒子が含まれ、大きいものはすみやかに落下し、小さいものはすみやかに飛沫核に移行するが、その状態変化は連続的だ、という理解でよいのではないでしょうか。

 

エアロゾルの定義

飛沫はエアロゾルだとツイートしたら、それは違うというご指摘を受けて、「飛沫はエアロゾル」という強情な記事を書きました、しかし、エアロゾルに関して私の理解が適切でないことが判明したので、記事を全面改訂します。

私は個々のエアロゾル粒子をエアロゾルaerosolsとは言わないと理解していました。エアロゾルは粒子と気体の混合体のことであり、個々の粒子はaerosol particlesだと理解していました。しかし、

エアロゾルペディアの解説

によれば

エアロゾルは、空気中に微小な液体粒子(droplet)や固体粒子(particle)が浮遊している分散系、あるいは浮遊している粒子そのものを意味する。後者のように、微粒子そのものを意味する場合には、エアロゾル粒子(aerosol particles)とよぶこともあるが、通常はわざわざ区別せずに用いることが多い。」

と明記されています。

これが現在専門家が用いている定義とわかりましたので、以後この定義に従います。

なお、ウィキペディア日本語版には

なお俗に、微粒子のことをエアロゾルと呼ぶことがあるが間違いである。

と書かれています。日本語版はときどき間違っているので、いつも英語版を比較参照するようにしていますが、英語版でも

Aerosol is defined as a suspension system of solid or liquid particles in a gas. An aerosol includes both the particles and the suspending gas, which is usually air.

と書かれており、これを読む限り、エアロゾルはシステムであって、個々のparticleはaerosolではないと理解されます。

日本エアロゾル学会のウェブページ でも

気体中に浮遊する微小な液体または固体の粒子と周囲の気体の混合体をエアロゾル(aerosol)と言います。

と書かれています。そのほか、私の専門に近い分野でエアロゾルについて書かれた論文を読んだ経験の範囲では、個々の粒子をエアロゾルと書いた論文を知りません。そこで、医学分野で個々の粒子をエアロゾルと呼んでいるのは特殊な用法と思っていました。この点は誤解でしたので、訂正します。

あわせて、飛沫と飛沫粒子を区別する用法はやめます。私は、飛沫は飛沫粒子・飛沫核を含む、さまざまな粒子が含まれたエアロゾル、という理解をしていましたが、この用法は混乱を招くことがわかりました。以後、エアロゾルエアロゾル粒子、と同じように、飛沫=飛沫粒子=dropletsという用法を使います。

このように、用語の混乱を避けるように襟をただしたうえで、医学系論文において飛沫とエアロゾルの基準が定まっていないことについて、次の記事で書きます。長くなるので、ひとまずここで記事を区切ります。

 

大濠公園の景観

大濠公園美術館周辺には在来種カンサイタンポポが自生しています。水路や樹林もあります。このエリアの景観の動画を撮ってきて、インスタグラムにあげました。

 
 
 
 
 
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楽観的な人ほど予防行動をしていない

新型コロナウイルス感染症流行下の心理的状況・予防行動と性格の関連について調べた研究の結果が、昨日PLOS ONE誌に公表されました。

-https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371%2Fjournal.pone.0235883&fbclid=IwAR04m79ME4RkuB4ja05wQTGRQp6xfNvXc7Prr3eSL3B9Nbb6SSWg30tkimk

新型コロナウイルス感染症の緊急事態宣言発出直後の2020年4月8日からオンライン調査を開始し、第一回の調査では日本全国から1856名の有効回答を得ました。その後6月中旬まで毎週調査を実施し、10回分の時系列データを得ましたが、今回の論文は第一回の調査結果を分析したものです。この研究では、市民の性格が予防行動や心理的負担(ストレス・不安・抑うつなど)に影響するのではないか、という点に注目しました。人の性格には、神経質・外向性・協調性・良心性・開放性という5つの基本因子(ビッグ5)があることがわかっています。これらはいずれも、人間の協力行動とともに、おそらく多様化を促す選択圧の下で進化した性質です。いずれの性格因子においても、人はきわめて多様です。この多様性(個人差)に注目した本研究の結果、5つの性格因子はすべて予防行動に有意に関係していました。神経質・外向性・協調性・良心性・開放性のそれぞれにおいて傾向が強い人ほど予防行動のレベルが高いという結果が得られました。このような個人差が、感染リスクの違いを生んでいる可能性があります。神経質傾向が弱い人(=楽観的な人)、外向性傾向が弱い人(=他人の評価を気にしない人)、協調性が低い人は、予防行動をしっかりとるように、自覚を強めてほしい。良心性は自制心と関係が強い性格因子です。自制心が弱い人は、自分ではなかなか予防行動をとれない可能性があります。周囲のサポートが必要でしょう。開放性は知識欲と関係しています。感染の動向などをあまり気にしたい人は、予防行動レベルが低いかもしれません。教育の機会を増やし、予防に関する正確な知識を普及することが重要だと考えます。論文投稿後に、これらの結果についてさらに分析を進めています。5つの性格因子は、因子分析という方法で評価されています。この方法は、性格因子間の相関を許しています。行動生態学的には、5つの性格因子間の相関が気になります。相関がマイナスならトレードオフがあると考えられます。この相関について調べてみると、やはりトレードオフが見つかりました。この点は、基礎科学的にも感染対策上も重要と考え、分析作業を進めているところです。結果を早く論文にまとめたいと思いますが、本業の絶滅危惧植物調査も繁忙期に入りつつあり、時間が足りません。

66歳になりました

今日で66歳になりました。

幸い、若い人と一緒に山に登って、沢の岩の上を飛び歩いたり、崖をのぼったり、道なき道をやぶ漕ぎしたりできる体力がまだあります。この体力を維持して、あと10年は現役野外研究者を続けたいと思います。

当面、70歳までの5年間で、これまでやってきた仕事をまとめ、今年度からスタートした新しいプロジェクトの成果を発表します。

昨日、アメリカ植物学会から嬉しい知らせが届きました。大学院生の永濱さんと昨年12月にAmerican Journal of Botanyに発表した論文:

https://bsapubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/ajb2.1387?elqCampaignId=27757&elqTrack=true&elq_cid=25669850&elq_mid=43484&utm_campaign=27757&utm_content=Batch1-Email-FY20-Q3-R-DG-TopDownloaded-Authors-W26CS&utm_medium=email&utm_source=eloquaEmail&fbclid=IwAR25XCZCIXSrmUVRahjlHqhjcBBx-xwxGapFQcodCqoSjaq63lJfHiIPZRg

が、2018-2019年にAJBに発表された論文の中で、ダウンロード数上位10%に入ったそうです。

https://twitter.com/payoe___n/status/1255821979111702529/photo/1

九州大学伊都キャンパス生物多様性保全ゾーンで、樹木・草本の開花フェノロジーを調べた研究です。花を数えるという地道なローテクを使って、長年研究されてきたテーマで、国際的に注目を集める研究論文を発表することができました。何よりも、第一著者の永濱さんの努力の賜物です。大学教員のキャリアの最後に彼女の指導ができて幸いでした。

また、東アジア・東南アジアのマテバシイ属について、MIG-seq解析をした国際共同研究の論文が、数日前にアクセプトされました。

7年間かけて東南アジアで集めた植物のサンプルはまだまだたくさんあります(4万点を超えています)。いま、クスノキ科を優先して解析を進めています。夏までにはクスノキ科の解析を終えて、論文を10編くらい仕上げる予定です。先月、Actinodaphneについて研究している岡部君の学位審査が無事終わりました。Actinodaphneについて論文が一編アクセプトされていますが、さらに3編を近いうちに投稿できる見通しです。Actinodaphneはバリバリノキ属という和名でしたが、多系統であることが確定しました。属を分割します。クロモジ属Lindera、ハマビワ属Litseaも多系統です。属の概念を改訂する必要があります。さらに、クスノキ科でおそらく100種をこえる新種があります。クスノキ科だけで論文をたくさん発表しなければなりません。

クスノキ科を夏までに片付けることができたら、続いて東南アジアのブナ科の分類を改訂します。ブナ科にも、とくにベトナムにたくさん新種があり、系統学的に大きな発見もあります。

そのあと、マメ科やアカネ科を調べる予定です。当分の間、論文を書く材料は尽きません。

このほか、キスゲプロジェクトの論文で、あずかっている原稿をできるだけ早く最終チェックして、投稿したいと思います。預かったままの原稿があと一編あります。また、花のRNA-seqの結果についての論文原稿がほぼできています。修士論文を書いて卒業した元大学院生と連絡をとりながら、早めに仕上げたいと思います。

このほか、投稿直前まできて、私のところで止まっている原稿がいくつかあります。ごめんなさい。できるだけ早く投稿します。

決断科学大学院プログラムのプログラム教員で共同研究として取り組んだFuture Earthプロジェクトの研究成果をまとめた英文書籍についても、原稿がほぼ完成していますが、私の最終チェックが遅れているため、まだ出版社に原稿を渡せていません。明日からの連休中に、この仕事にできるだけ決着をつけるたいと思います。

さらに、伊都キャンパスにおける森林移植の成果を検証した論文を2年前にかなり書いたのですが、その後作業が止まっています。この論文を早く完成させて投稿したい。また、送粉ネットワークに関するデータもあるので、論文を書く必要があります。さらに、伊都キャンパス造成工事前に植物分布を徹底してしらべたデータが未発表のままです。また、生物多様性保全事業全体の評価を論文にまとめたいのですが、これらの仕事の論文化に時間を割けるのは来年になりそうです。

さらに、屋久島におけるヤクシカ研究の論文をいくつも発表する必要があります。共同研究者から一編の原稿が届いたので、できるだけ早く読みます。また、大学院生との共同研究の成果を3編発表する必要があります。

以上を片付けるだけで十分時間がかかるのに、今年度から2つの仕事が新たにスタートしています。

一つ目は、環境研究総合推進費「次世代DNAバーコードによる絶滅危惧植物の種同定技術の開発と分類学的改訂」です。私を代表とする3年間のプロジェクトです。昨年6月に設立した一般社団法人九州オープンユニバーシティとして受ける最初の仕事です。

「日本の野生植物総点検プロジェクト」というタイトルで研究計画の概要を公表しました。

https://open-univ.org/archives/1674

また、第一弾として「タネツケバナ属」についてのスライド資料を公表しました。

https://open-univ.org/archives/1678

このようなスライドを全属について作り、"New Flora of Japan"を編集したいと考えています。研究分担者には強力なメンバーが揃っていますが、他の研究者や地方で植物を調査されている方々にも協力をお願いして、日本の野生植物総点検プロジェクトをオープンサイエンスとして進めたいと思います。連休明けの7日には、Zoomでキックオフ会議をやります。

二つ目は、新型コロナウイルスの感染拡大、緊急事態宣言の下で、市民の行動・不安・知識がどのように変化しているかについての、心理学的・行動生態学的研究です。心理学が専門の決断科学センタースタッフと共同で、4月から開始しました。緊急事態宣言直後から、Yahooクラウドソーシングを利用したウェブアンケートを毎週実施しています。第一回の調査でとても意味のある結果がとれたので、論文を準備中です。研究して論文を書くだけでなく、アウトリーチにも時間を割いています。

https://open-univ.org/archives/1686

に、アンケートで尋ねた「科学リテラシー」に関する20項目についての集計結果を公表しました。「タンパク質はアミノ酸でできている?」という質問に対する正解率は、わずか6%でした。

これらの20の質問項目についての解説スライドを順次公開していきます。第4回まで公開しました。

https://open-univ.org/archives/1640

今後、20回分のスライドを5月中には完成させ、広く普及啓発をはかり、その成果をモニタリングしたいと思います。

一方で、どのような性格や道徳観を持った人が予防行動のレベルが高いか(あるいは低いか)、不満のレベルが高いか(低いか)、不安のレベルが高いか(低いか)、についての調査結果を分析中です。性格因子や道徳基盤に関する従来の心理学的研究を、行動生態学的視点から見直したいというアイデアを、決断科学大学院プログラムの7年間を通じて育ててきました。そのアイデアを実行に移しています。この成果から、人間の行動生態学的研究を大きく展開できそうです。このような研究を進めながら、新型コロナウイルス感染症流行下での予防行動や不安対策について、社会的に問題提起・提案を行っていきます。

「決断科学」(Decision Science)は、結局は人間の行動生態学だ、と考えるに至りました。英文書籍にまとめる成果や、新型コロナウイルス感染症流行下での予防行動や不安についての研究成果をもとに、「決断科学」または「人間行動生態学」に関する教科書を書きたいと考えています。「保全生態学入門」に続く、広く読まれるテキストになるだろうと予想しています。

その「保全生態学入門」の改訂作業に着手しています。今年に入ってから時間がとれず、第2章の改訂までで作業が中断していますが、英文書籍の原稿を早く出版社に渡して、「保全生態学入門」の改訂作業を再開したいと思います。

こうやって書いてみると、やりすぎですね。時間がいくらあっても足りません。

一方で、キスゲを研究する大学院生がいなくなったため、キスゲの鉢の水やりをして、系統を維持しています。これは、一種の瞑想の時間として使っています。心を無にして、鉢ひとつひとつに水やりをする行為に1時間くらい集中するのは、瞑想のトレーニングとしてとても良いと感じています。

九州オープンユニバーシティ代表理事として、毎日スタッフとのZoom会議も開いています。この一般社団法人の事業を育てることも、ぜひやり遂げたいミッションです。

というわけで、66歳になっても私は元気です。

 

退官記念シンポジウム開催に関する判断

3月22日開催予定のシンポジウムに関して、関係者に以下の連絡をしました。3月15日に九大で開催予定の講演会についても、同様に3月1日に判断したいと考えています。
 
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新型コロナウイルス感染の拡大についてご心配のことと思います。
 
感染拡大にともない、開催延期を視野に入れて情報収集につとめ、 2月15日の時点で twitterに注意喚起の発信をしました。一連のツイートは以下のブログにまとめ。追加説明を加えました。尾身茂氏による講演の要点もメモにまとめて発信しました。
 
 
その後5日間の経過を見ると、15日時点で私が予想した広域的感染拡大は回避されています。まだ予断を許しませんが、3月までに流行が沈静化する可能性が出てきました。このため、駒場シンポジウムを延期するかどうかは、3月1日の時点で判断することとさせてください。
 
3月15日以後、中国渡航者・その接触者以外にも PCR検査が 拡大されました。その結果、さらに感染者の確認が増えましたが、感染者の確認地域は北海道・首都圏・愛知・関西圏・沖縄に限定されており、感染者の感染経路もほぼ特定されています。感染者と密に接触した候補者についての検査が行われていますが、感染者の確認は限定された範囲にとどまっています。東京の屋形船のケースでは、タクシー運転手の周囲に着席していた人だけに感染しています。尾身さんも指摘されているように、約1mの範囲での飛沫感染接触感染が感染経路と考えられ、インフルエンザのように空気感染は起きていないと判断されます。
 
現在、感染源については封じ込め対策がとられており、皇居の一般参賀東京マラソンの一般参加なども中止され、市民の警戒レベルもあがっているので、全国的な感染拡大は防げる可能性が高くなってきたと判断しています。
 
現在は予防原則にもとづき徹底した防御策をとるべき段階なので、駒場シンポが2月の開催であれば、迷わず延期します。しかし開催日が3月22日なので、あと10日間の状況の推移をみたうえで、判断したいと考えています。
 
ご心配のことと思いますが、上記の判断についてご理解を賜りますよう、お願いいたします。
 
 
 
 

新型コロナウイルスに市民はどう備えれば良いか?

昨日新幹線車中で連投したツイートをまとめました。

〇感染経路不明の新型コロナ感染者が各地で確認され、感染の広域化はもはや事実。この段階では市民が流行拡大を防ぐために協力することが大事だ。移動中の時間を利用して私が適切と考える市民の防衛策を提案する。まず大事なのは冷静に警戒すること。楽観バイアスと感情的恐れや不安は判断を誤らせる。

コロナウイルスは風邪のウイルスの一種という理解は適切ではない。コロナウイルスという分類は動物で言えばネコ科やイヌ科のような大きな範囲だ。ネコ科にはトラもライオンもいる。ライオンをただのネコ科と侮ってはいけないように、新型コロナウイルスをただの風邪のウイルスと侮ってはいけない。

新型コロナウイルスは人類に初めて感染を拡大した新興病原体であり、有効な治療法は確立されていない。感染すると肺で増えて肺炎を起こす場合が多く、こうなると治療が難しい。したがって、感染拡大を防ぐことがとても重要だ。そのためには、ウイルスが飛沫感染接触感染する機会を減らすことが重要(追記:現状では空気感染は起きていないと考えられている)。

〇感染拡大を防ぐ方策はインフルエンザの場合と同じ。できるだけ人混みを避ける、人混みではマスクをする(特に、花粉症にせよくしゃみや咳が出る人は必ず)。また、手洗い、うがい、歯磨きをする。睡眠をしっかりとり、過労や二日酔いを避ける。体を冷やさない。適度な運動とバランスのとれた食事。

〇要するに当たり前の健康管理をしっかりやって、疾病リスク全体を減らすこと。この時期には、多くの市民が健康管理をしっかりやることが重要だ。不安は疾病リスクを高めるので、こころの安定も重要。健康管理をしっかりやることが不安解消にもつながる。また、起床時間と寝る時間を決めてリズムを守る。

〇生活リズムの乱れは体内リズム(概日リズム)や自律神経のバランスを崩し、不安や疾病リスクを高める場合がある。私は毎朝玄関で太陽光線を受けて概日リズムを調整し、ストレッチして体をほぐす。この生活リズムをしっかり守っている。また不安対策には瞑想も有効。

〇ウイルスはDNAやRNAがタンパク質に包まれただけの存在で、生体膜を持たないので、これらの物質を強力に変性させるエタノールに弱い。したがってエタノール入りの消毒液で手を消毒することはウイルス感染を避け、またあなたの手についたウイルスを他人に移さないために、特に有効。(追記:コロナウイルスの場合、石鹸が外側のエンベロープを壊すので、石鹸でもかなり有効と言われている)。

〇ウイルスはとても小さな存在なので、マスクの網目を軽々と通過できる。しかしマスクの繊維に付着するので、吸入・放出を減らすことはできる。くしゃみや咳が出る人は必ずつけてほしい。一人一人の着用効果は小さくても、みんなが協力することで予防効果を高めることが期待できる。(追記:インフルエンザと違って空気感染しないコロナウイルスの場合、マスクの効果はより高いと考えられる)。

〇マスクはいま品薄で、アマゾンでは50枚入り一箱約1万円の値がついている。この背景には買い占めがあり、政治主導で価格と供給対策をしてほしいが、手に入らない場合には諦めて良い。気に病んで不安を抱える方が悪い。ただし、咳が出ている人はマスクがないなら外出を控える(追記:マスクは簡単に自作できる。「マスク」、「自作」で検索すればいろいろな動画がある。布製より使い捨てのほうがむしろ良いので、以下のキッチンペーパーマスクは有力な選択肢https://sonaeru.jp/goods/handiwork/groceries/g-12/)。

〇終着駅に到着したので、これで終わります。もしツイート内容に不適切な点があればご教示ください。

 
 
 
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