奨励賞審査

今日は、朝から九州大学東京オフィスにこもり、ある学会の奨励賞候補者の応募書類を読んでいる。さまざまな分野から選りすぐられた候補者の研究業績を評価する仕事である。大変であるが、この仕事は楽しい。さまざまな分野の最先端で、どのような研究が展開され、どのような若手が台頭してきているかがわかる。逸材が何人もいて、頼もしい。一方で、Aをつける数名を選ぶ作業は、本当にむつかしい。
まったく独自の材料を選び、自分の系を立ち上げて、成果を積み上げてきてきた研究者と、大きなチームの中で、リーダーとしての頭角をあらわし、プロジェクトを率いて成果をあげてきた研究者と、どちらを選べばよいのだろうか。
研究技術が日進月歩の分野で、最先端の技術を駆使してめざましい成果をあげている研究者と、技術革新が容易ではない分野で、独自の視点を確立して新境地を切り開いている研究者と、どちらを選べばよいのだろうか。
唯一の答えは、ない。結局、どのようなジャーナルにどれくらい論文を書いているか、研究成果の意外性、業績のインパクト、研究の一貫性やストーリー、将来性などを総合的に評価して選ぶことになる。判定はしばしば、僅差である。応募する人には、その年に選ばれなくても、何度も応募されるように勧めたい。
僅差の評価において、ときに重要となるのが、学会の大会でのアクティビティだと思う。学会の大会でのプレゼンテーションがうまく、他の発表に対しても積極的に、的確な質問やコメントをして、大会で目立っている若手は、有利だと思う。もちろん、論文業績がなければ話にならないが、業績で僅差の勝負の場合には、日ごろの学会での印象が評価を分けることがあると思う。
これは、たとえば学術振興会の特別研究員の審査においても、ある程度言えることかもしれない。
学会の大会は、単に研究成果を発表する場であるのみならず、研究者としての自分をトータルにアピールする場である。少なくとも私は、そのような考えで、学会大会での若手の発表を聞いている。とくにポスター会場では、可能な限り全部、見てまわるようにしている。