九大新キャンパスの生物多様性を誰が守るのか?

この問題に関連して、Ostromさんから、長文の質問が寄せられました。九大新キャンパスでの生物多様性保全事業に関心を持っていただき、ありがとうございます。
新キャンパスにおける保全緑地の管理体制については、3月に私が所属する緑地管理ワーキンググループから執行部へ提案をあげています。10月の開講までには、体制が確定するでしょう。また、保全緑地の利用規則も制定される予定です。このような規則やガバナンスの仕組みを作ると同時に、移転する学生・教職員への啓蒙活動や、保全の担い手の育成も大きな課題になります。「担い手」としては、学生たちが作ったNPO法人「環境創造舎」が活発に活動しています。また、2つの市民ボランティアグループも活動しており、大学は「生物多様性保全ゾーン」を市民に開放しながら守っていくという方針をとっています。
実際に、新キャンパスが開講すれば、さまざまな問題が発生するでしょうが、造成工事期間中にも、さまざまな問題に取り組み、ひとつひとつ解決してきました。これからも壮大な実験が続くと思いますが、協力者・理解者は確実に増えており、私は希望を持っています。
今後は、新キャンパスに隣接する地域の住民との協働も、非常に重要になっていくと思います。今津干潟に関しては、福岡市が「今津干潟懇話会」をスタートさせ、行政・住民・研究者が同じテーブルについて、干潟の保全や再生の方向について議論を始めています。また、新キャンパスとの関連で拡幅工事が行なわれる水崎川についての、生物を守りながら工事をするために、同様な検討会が組織されています。これらに加えて、新キャンパスの保全緑地のうち、竹が繁茂して森林が消失している場所の森林再生を目標とする、自然再生協議会を作る方向を模索しています。
行政・住民・学生・研究者・大学が協働して、生物多様性や自然環境を守っていく新しいネットワークを発展させたいと考えています。
このような事業を発展させるうえで、社会科学分野の研究者の参加を切望しているのですが、現状では学内でまだアクティブな協力者がいないのが実状です。この点は、これからの課題ですね。