研究

ヤクノヒナホシ

10月28日のブログで紹介した、ヒナノボンボリ属の新種には、ヤクノヒナホシ(屋久の雛星)という名前をつけた。 先週後半に、研究プロジェクトの現地報告会のために屋久島を訪問したところ、発見者Yさんの友人のNさんから取材を受け、あれよあれよという間に…

第三のツリフネソウ?

週末に講演に出かけた福井総合植物園内の湿地で、変わったツリフネソウを見かけた。花の写真を撮っておいたので、ツリフネソウ・ワタラセツリフネソウと比較してみた。ツリフネソウ・ワタラセツリフネソウの違いは、主に側弁(小花弁)の形である。ところが、…

ヒナノボンボリ属の新種確認

昨年10月8日のYOCAの会で、屋久島在住のYさんに見せていただいた写真から、屋久島にホシザキシャクジョウに似た植物があることがわかった(→昨年10月8日のブログ)。その植物を確認するために、10月4日に屋久島に出かけたのだが、このときは確認できなかった…

植物耐病性遺伝子が生殖隔離に関与

ゲノムコンフリクトによる種分化の可能性について勉強したことがある人なら、このタイトルにピンとくるかもしれない。 植物耐病性遺伝子(いわゆるR遺伝子)は、病原体の感染力遺伝子(歴史的事情から英語ではavirulent geneと呼ばれる)に由来する淘汰を受…

Contemporary Evolutionに関するFunctional Ecologyの特集号

今回のbioGENESIS科学委員会から、Andrew Hendryが新メンバーとして加わった。「人間が変え続けている環境の下での適応的進化」というテーマをカバーしてくれる人材としては、余人をもって代えがたいと思う。実際、bioGENESIS科学委員会では、積極的に発言し…

死に体のColysisをとりあえず生かすことにする

日本産のイワヒトデ属Colysisの種では、胞子のう群が主側脈の間に一列に並び、線状に見える。この特徴は、とてもわかりやすいので、イワヒトデ属Colysisの名前は何とか残したい。しかし、この取り扱いはなかなか厄介である。 上記のように、イワヒトデ属のヤ…

ウラボシ科はうらめしか

先だって環境省から公表された植物レッドリストには、学名の記載ミスがった。一番お恥ずかしいのは、コケタンポポの学名が Solidago altissima になっていること。何人もの委員が目を通しているはずだが、見落としてしまった。もうしわけない。 やむなく、学…

天目山再訪、植物相の類似についての考察、そして再び夜宴

昨日は、天目山を再訪し、午前中は山麓の林内を歩いた。前回以上に、九州との共通性を実感した。草本に関しては、共通性があるというよりも、基本的に同じである。同種の割合は9割近いだろう。低木になると、違いが目立つ。日本の種に似ていても少し違って…

花粉一粒でPCR

昨日は、キスゲプロジェクトの共同研究者のひとり、Sさんに研究室に来ていただいて、花粉一粒からDNA配列を決定する「技」の実習をしていただいた。私は学内の会議(環境WG)で報告をするため、実習に立ち会えなかったが、参加者の感想を聞くと、なかなかイ…

照葉樹林の樹木の多様性

中国南部Dinghushanの照葉樹林では、九州南部に比べ、樹種の多様性がはるかに高い。 屋久島では5種しかないブナ科が、19種ある。 屋久島では6種しかないツバキ科が19種ある。 屋久島では7種しかないハイノキ科が12種ある。 屋久島では9種しかないクスノキ科…

生命之樹シンポジウム初日

シンポジウムの初日終了。 今朝から、インターネットに接続中の処理時間が長い。九大のサーバーにはしばしばアクセスできないし、はてなダイアリーのページもしばしば見れない。 たぶん、アンテナの受信状態のせいだろう。ネットを使う客が増えたことも、少…

ジンリョウユリ

予想は的中した。ジンリョウユリには、他殖的な個体と自殖的な個体の多型があるのではないかと予想していた。写真の左側は、めしべとおしべが接した自殖型の個体。一方、右側は、めしべ(柱頭)とおしべに距離があり、送粉昆虫が訪花しない限り受粉しない他…

屋久島の植物のニッチ分化

今日は大学が停電なので、家にこもって講演の準備をした。3-7日に北京で開催される、Evolutionary Biology in the 21st Century‐Tracing Patterns of Evolution through the Tree of Lifeというシンポジウムで30分の基調講演をしなければならないのだ。参加…

総説原稿執筆完了

「花香と花色−キスゲとハマカンゾウの種差の遺伝的背景を探る」と題する総説原稿をやっと書き上げた。日本植物分類学会賞受賞講演で話した内容のうち、キスゲプロジェクトに関連する部分にしぼり、最新のアイデアを書き込んで仕上げた。 今朝、最後の仕上げ…

久しぶりの小貝川

所用で一昨日に上京し、今日は久しぶりに小貝川まで足を伸ばした。 つくばエキスプレスができたおかげで、水海道へのアクセスが良くなった。秋葉原からつくばエキスプレスに乗り、守谷で関東鉄道に乗り換え、4つ目の駅が水海道である。水海道駅の雰囲気は昔…

ケープのカヤツリグサの群集系統学的研究

夕食をとりながら、googlingをして、ケープ大学のパブで話をした二人の大学院生の共著論文を見つけた。 Jasper A. Slingsby and G. Anthony Verboom Phylogenetic Relatedness Limits Co-occurrence at Fine Spatial Scales: Evidence from the Schoenoid Se…

ケープの植物多様性の系統樹による評価

トランジット・ホテルは残念ながら満室だった。しかし、シャワールームはホテルとは別にたくさんあって、すぐに使えた。暖かいお湯のシャワーをあび、髪も洗って、すっきりした。 そこで、少し勉強をした。 ケープ行きが決まってから、ケープの植物多様性に…

ホシクサモドキ科は超原始的被子植物

「ホシクサモドキ科」という植物の科を知る人はいないはずだ。なぜなら、私がここでつけた和名だから。学名は、Hydatellaceaeという。西オーストラリアとインドに分布する、ホシクサに似た「単子葉植物」であり、カツマダソウ科(Centrolepidaceae)に含めら…

ニッチモデルと系統樹を統合するアプローチ

私が考えていたアイデアの一部が、すでに論文になっていることを知った。以下の論文がそれ。オープンアクセスジャーナルに掲載されている。 Yesson C and Culham A(2006a) A phyloclimatic study of Cyclamen. BMC Evol Biol. 2006; 6: 72. また、この著者…

河川性生物の祖先生息域推定

についての「幾霜::残日録::2007/02/09」にいま気づいた。 深夜の修士論文改稿に疲れ、ふと心のわき見→Mくん学位審査に関して幾霜残日録に辛口のコメントが掲載されたと当人から聞いたことを突然思い出す→幾霜::残日録::2007/02/09を見ると、「昨日のM氏ドク…

ミカワタヌキモのゲノムサイズはシロイヌナズナよりも小さい?

ミカワタヌキモは、絶滅危惧IB類として、環境省レッドデータブックにリストされている絶滅危惧植物である。この植物が、ひょっとすると植物ゲノム研究の新たな材料として、脚光をあびることになるかもしれない。 Greilhuber et al (2006) Smallest Angiosper…

ファン・シー・パン:インドシナ最高峰に登ってみたい

気がつけば、1月も下旬。正月が遠い昔のようだ。 今年の正月は、血圧を下げるべく、休養をとっていたので、考えて見ればまだ、新年の抱負を書いていなかった。遅ればせながら、今日は新年らしく、夢のある計画を書いておこう。 屋久島の植物分布を調べている…

新しい生物地理学の胎動

生物地理学は古くて新しい学問である。その歴史は、近代生態学の成立以前にさかのぼる。若きダーウィンを世界一周の旅にいざなったフンボルトの旅行記は、生物地理学のひとつのルーツと言えるだろう。生態学の発展初期には、植生の地理分布に関する研究がさ…

地球観測計画シンポは略号の嵐

一昨日の夕方と昨日は、GEOSS-APシンポジウムに出席した。GEOSSとは、Global Earth Observing System of Systemsの略。System of Systemsというのは変な表現だが、「さまざまな観測システムにもとづくシステム」という意味のようだ。九大のとある外国人スタ…

ケプラーの衝撃とメタンミステリー

あとしばらくで、今年も終わり。1年間の反省を書けばきりがない。しかし、反省とは、しばしば自己弁護や自己満足に終わるものだ。だから、あれこれと反省を書くことはやめよう。 今年最後のブログでは、今年私がいちばんびっくりした科学的発見を取り上げよ…

合衆国東部で日本のメギやツルウメモドキが大繁殖

ニューイングランドの外来植物を研究しているJohn Silanderさんとつくばで外来植物のシンポジウムに出た。そのあと、Silanderさんに九大に来ていただいて、生態研・天草臨海実験所・数理研でセミナーをしていただいた。3回もセミナーを頼んだので、御礼に阿…

フミン酸の構造

フミン酸が分解されにくいことは知っていたが、構造についてはよく知らなかったので調べてみた。ベンゼン環がつながっているのだろうとは思っていたが、まさかここまで複雑とは・・・・ → フミン酸の構造モデル。 植物がつくるポリフェノール類よりも複雑だ…

土はなぜ茶色か?

京都で開かれた日本生態学会全国常任委員会に出て、福岡に戻る新幹線車中である。会議後の夕食の席で、これからは土壌生態系が面白いという話をしたら、賛同者が多くて、議論がはずんだ。そこで、今夜は土の話題を書いておこう。 土壌中には、膨大な量の炭素…

ネコ好きのコーキシンをそそられる発見

屋久島から戻り、屋久島などをフィールドとする環境省プロジェクトの延長申請書(明日しめきり!)をせっせと書いている。屋久島で参加した「交流会」の議論は大変有意義だったので、それについても書きたいが、いまは余裕がない。 気分転換にちょっと思い当…

野生化したグッピーの性的二型

個体群生態学会で、グッピーの性的二型に関する狩野さんのお話を伺った。オスの長い尾には、体を大きく見せてメスを騙す効果があるようだ。その話自体も面白かったが、何よりも、沖縄各地の河川や用水路に、野生化したグッピーが普通に見られ、流水環境に応…