地球観測計画シンポは略号の嵐

一昨日の夕方と昨日は、GEOSS-APシンポジウムに出席した。GEOSSとは、Global Earth Observing System of Systemsの略。System of Systemsというのは変な表現だが、「さまざまな観測システムにもとづくシステム」という意味のようだ。九大のとある外国人スタッフによれば、英語表現として納得がいかないそうだが、地球観測サミットにおいて日本が国際的に公約した重要な観測計画である。国際的な地球観測サミットで承認された表現であり、たとえばUS EPAのGEOSS HOMEでも、Group on Earth Observations(GEO)のサイトでも、もちろん使われている。
APはAsia-Pacificの略。
これらの略号はまだ序の口である。シンポジウムに参加した第一の印象は、略号が飛びかう会議だということ。
メモをした略号をウェブで検索して調べてみた。

もちろんこの略号は知っていたが、IはInternationalかと思っていた、「政府間」なので、Intergovernmental。確かにそうだ。

  • IGCO Integrated Global Carbon Observation

こちらはIntegratedなのね。

  • GCP  検索すると、同じ略号がたくさんあるぞ。

「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(=GCP[Good Clinical Practiceの略])とか。
Global Carbon Project・・・きっとこれだろう。
このプロジェクトについてのサイトをたどっていくうちに、「国際研究計画・機関情報データベース」というものにたどりついた。これは役に立つ。

  • 機関一覧

http://www-cger.nies.go.jp/cger-j/db/info/listorg.htm

  • 計画一覧

http://www-cger.nies.go.jp/cger-j/db/info/listprg.htm

  • データベース一覧

http://www-cger.nies.go.jp/cger-j/db/info/listdb.htm
そして極めつけは、

  • 略語一覧

http://www-cger.nies.go.jp/cger-j/db/info/abbreviations.htm
これを使えば、略号を片端から調べることができそうだ。
以下は、この「国際研究計画・機関情報データベース」に掲載されている解説である。上部機関や資金提供機関との組織的関係も図示されていて、とても便利である。

GCPは、地球圏−生物圏国際協同研究計画(IGBP)、地球環境変化の人間社会側面に関する国際研究計画(IHDP)、世界気候研究計画(WCRP)の間のパートナーシップを通じて形成されたプロジェクトである。GCPは、生物物理学的側面と人間的側面と、それらの相互関係やフィードバックを含む、地球規模の炭素循環の全体像を明らかにすることを科学的目標としている。

なるほど、なるほど。ちなみに、解説中にある3つのプログラム名略号にはリンクが設定されていて、それぞれのプログラムのサイトをたどれる。そのため、プログラムの正式名称はすぐにわかった。
IGBP:International Geosphere-Biosphere Programme
IHDP:International Human Dimensions Programme on Global Environmental Change
WCRP:World Climate Research Programme
どれもよく耳にするプログラム名だ。

  • GCOS Global Climate Observing System : 全球気候観測システム

これについても、「国際研究計画・機関情報データベース」に解説がある。

GCOSは、気候関連問題への対処に必要な観測と情報の取得と、それらの情報等のあらゆる潜在的なユーザーによる利用を確実にするため、1992年に設立された。
 GCOSは世界気象機関(WMO)、国連教育科学文化機関(UNESCO)の政府間海洋学委員会IOC)、国際科学会議(ICSU)および国連環境計画(UNEP)がスポンサーとなり活動している。
 GCOSの目的は、GCOS参加国の持続可能な発展を助けるために、気候観測および気候変動に関する次の活動を行うことである。

ふむ、ふむ。しかし、新たに5つも機関名略号が登場した。ユネスコはもちろん知っているが、日本語の正式名称を言えといわれると、フリーズする。アイ・オー・シーと言われれば、国際オリンピック委員会が思い浮かぶが、政府間海洋学委員会もアイ・オー・シーだとは知らなかった。
やや、食傷気味である。

  • GOSAT・・・ない!「国際研究計画・機関情報データベース」の略号リストにないぞ。どうしたデータベース!

しかし、ググるとすぐにヒットした。
温室効果ガス観測技術衛星「GOSAT
あぁ、そうですか。GOって、Gas Observationかな。SATはsatelliteだね、きっと。正式名称を調べるのは、もういいや、という気になってきた。

  • SEASON・・・これも、ない!

でも、メモがあった。South East Asia Satellite Observation Network
うーむ。気が利いた略号ではあるが、SEASONで検索して、このネットワークにたどりつくのは至難の技だろう。日常用語に語呂をあわせて略号を作ると、検索が困難になるということを覚えておこう。

  • MODIS

NASA地球観測衛星TERRA/AQUA搭載センサMODIS
The Moderate Resolution Imaging Spectroradiometer
正式名称を始めて知った。

  • AVHRR

このセンサーに関しては、以下のサイトに詳しい解説がある。
http://web.sfc.keio.ac.jp/~masudako/class/geoinfo/remsens/avhrr.html
以下は、引用。

現在の地球環境変動を論じる上で欠かせないデータ源として、 AVHRRというセンサーがある。可視光線と赤外線の受動型の走査観測でディジタル画像を得るセンサーである。
AVHRRはAdvanced Very High Resolution Radiometerの略だが、1970年代の技術の産物なので、今となってはこの名前はふさわしくない。しかし、このセンサーは今でも次の点で重要である。(一部は、センサー自体ではなく、衛星の運用や担当機関(NOAA=アメリカ合衆国海洋大気庁)のデータ公開の方針からくる特徴だが)

いまや、Advanced Very High Resolutionなんていえる代物ではないけど、同じ基本設計のセンサーで運用がしっかり継続されており、なにしろデータの利用は基本的にフリーなので、とっても便利なのである。

以下は、http://ja.wikipedia.org/wiki/MTSATより引用。

MTSAT(エムティーサット)は運輸多目的衛星(Multi-functional Transport Satellite)の英語略称で、宇宙開発事業団及び宇宙航空研究開発機構が打ち上げた大型の静止衛星である。

MTSAT-2はH-IIAロケット9号機によって日本時間2006年(平成18年)2月18日午後3時27分打上げられ、衛星の分離に成功し、2月24日に愛称は「ひまわり7号」となった。

要するに、「ひまわり」のことね。

  • GMS・・・これもない!ググってみると・・・。

ビジネスの基礎からMBA取得まで学べるビジネススクールGMS−. GLOBIS MANAGEMENT SCHOOL ...これじゃない。
GMS :General Merchandise Storeはアメリカで始まった小売業態の一つですが、アメリカのGMSには食品売場がなく、日本のGMS業態は、食品売場を主力とした独自 ...これも違う。
後発で短い略号をつけるのは、よしたほうがよさそうだ。
「ひまわり」の愛称で知られる日本の静止気象衛星GMS」シリーズは、・・・おお、これだ!
http://www.nasda.go.jp/projects/sat/gms/index_j.html

  • GPP:gross primary production。これはもちろん、知っていた。一応、植物生態学者なので。

知りたかったのは、EVI。検索すると、enhanced vegetation indexの略だ。ああそうか、きっとNDVI(Normalized Difference Vegetation Index:正規化植生指標)を改良したやつね。と思って検索してみると、http://epp.eps.nagoya-u.ac.jp/~yoshida/japanese/science-notes/remote-sensing/VI.html
やっぱりそうだ。

NPP:net primary productionはわかるが、NEPって何だったっけ・・・Net Ecosystem Productionでした。
http://staff.aist.go.jp/old-gamo/2003.3a/3-1methodology-measurements.html

  • LBA・・・おお、これは「国際研究計画・機関情報データベース」の略号リストにあった。Large-Scale Biosphere-Atmosphere Experiment in Amazonia。略号リストになかったら、Google検索ではこの略号にたどりつけないかもしれない。

http://www-cger.nies.go.jp/gosat/gosat060609_e.pdf

  • GOSA・・・これもない! 幸い、メモにGround-baesd observation points:世界で320点、温暖化の観測点、とある。そこで、Ground-baesd observation pointsを加えて検索すると、

GOSAT Pamphlet 2006.5.
http://www-cger.nies.go.jp/gosat/gosat060609_e.pdf

がヒットした。このパンフレットのどこかに解説があるのだろう。そのうち、機内などの時間を使って、読んでみるか。

  • GITAN・・・またしても、ない! ググると、またしても、・・・らーらーらー。脱力。暇な人は自分で検索してみてください。試行錯誤の末、ようやく本命にたどりついた。

GITAN's Global Data Toolset (GDT)
http://rockyitr.cr.usgs.gov/gitan/
おおっ、トップページはなかなかいい。Birdlife Internationalとか、Conservation Internationalも参画している。このようなデータベースの統合化は、たいへんありがたい。しかし、アクセスするには、登録が必要なようだ。そのうち調べてみよう。
略号メモはまだまだあるが、もういいや。
シンポジウム全体を通じて、「Question」を提示した講演は皆無に近かった(もちろん私は、いくつかの疑問文を提示したが)。
衛星観測やフラックス観測で扱う「Question」は、それぞれの分野の関係者の間では共有されているので、あらためて提示する必要はないということなのだろう。
Curiosity-driven scienceとは違うカルチャなのである。