死に体のColysisをとりあえず生かすことにする

日本産のイワヒトデ属Colysisの種では、胞子のう群が主側脈の間に一列に並び、線状に見える。この特徴は、とてもわかりやすいので、イワヒトデ属Colysisの名前は何とか残したい。しかし、この取り扱いはなかなか厄介である。
上記のように、イワヒトデ属のヤリノホクリハランは、狭義のMicrosorumと姉妹関係にあるLeptochilusに含まれる。
イワヒトデ属Colysisのタイプ種はオオイワヒトデColysis pothifolia (Buch.-Ham. ex D. Don) C. Presl; Epim. Bot. 148 (1851)である。
一方、 Leptochilus Kaulf. の記載は Enumeratio Filicum (1824)なので、Colysisより古い。
属の範囲を広くとれば、Colysisという属名は使えない。すでに、マレーシア植物誌では、Colysis属の大部分の種を Leptochilusに移しているそうだ(Colysis; world species list)。
狭義のイワヒトデ属Colysisは上記のようにとてもわかりやすいのだが、おそらくイワヒトデ属Colysisを区別すると、Leptochilus の他の種が単系統ではなくなる(側系統となる)可能性が高い。
しかし、イワヒトデ属Colysisの種をすべてLeptochilusに組み換えた見解はないので、グリーンリストで使える学名は、Colysisの下での名前しかない。
そこで、とりあえず、イワヒトデ属Colysisは残し、オキノクリハランだけをLeptochilus属に分類しておく。
問題は、ミツデヘラシダとホコザキウラボシで、これらは明らかに狭義のColysisには含まれない。したがって、BG plantsの見解に従うわけにはいかない。
結局、いずれ分割されるのを承知のうえで、これまでどおりMicrosorumの下での名前を使っておくのが、もっとも混乱が少ないだろう。
以上、自分で忘れないためのメモ。ここまで読んだ人は、よほどのシダ好きか、学名好きである。