合衆国東部で日本のメギやツルウメモドキが大繁殖

ニューイングランドの外来植物を研究しているJohn Silanderさんとつくばで外来植物のシンポジウムに出た。そのあと、Silanderさんに九大に来ていただいて、生態研・天草臨海実験所・数理研セミナーをしていただいた。3回もセミナーを頼んだので、御礼に阿蘇を案内したのだが、草千里で雪に降られ、中岳には近づけなかった。しかし、日本の草原を見るのは始めてとのことで、喜んでいただけた。
Silanderさんによれば、メギがニューイングランドの自然林の林床で大繁殖しているそうだ。日本では湿地に生えるが、ニューイングランドでは乾燥した場所にも生え、自生の低木よりも競争に強いという。
また、ツルウメモドキが大繁殖して、これも困った問題になっているそうだ。直径が20cmくらいに太ったツルウメモドキが高木にまきついている様子は壮観である。
このほか、マユミ、ネズミモチ、ノイバラ、ハマナスなどが野生化して、厄介ものになっているそうだ。
日本には多数の種が北米から帰化しているが、木本はきわめて少ない。日本と北米東部の森林生態系の群集構造には、何か大きな違いがあるようだ。
すぐに思いつくのは、ササの存在である。北米東部の温帯林にはササがない。したがって、日本でササに更新を阻害されている樹木種が、北米では容易に更新できるのかもしれない。
もうひとつの可能性は、木本生のつる植物が北米東部には少ないことだ。ニューイングランドには、木本生のつる植物は、ふつうには2種しか見られないそうだ(ウルシ科のツタウルシ近縁種と、ブドウ科の種)。日本には、木本生のつる植物が多い。何よりも、クズが自生している。クズは緑化植物としてテネシー渓谷開発計画時に合衆国に導入され、その後に合衆国東部に野生化し、いまではきわめて厄介な外来種として、嫌われている。合衆国の研究者が、「カッズ!」(Kudzuをこう発音する)と吐き捨てるように言うのを何度も聞いたことがある。
クズ以外にも、テイカカズラ、キヅタ、フジ、アケビノブドウスイカズラ、などなど、木本生のつる植物は、普通種だけを数えても10種は下らない。
少し光環境が良い場所なら、メギのような低木の芽生えが生えても、あっという間につる植物に覆われて、枯死してしまうだろう。
しかし、第三の可能性として、日本ではこれまで樹木が野生化する機会があまりなかったのかもしれない。各地に植栽されたハリエンジュ(ニセアカシア)は野生化して問題化している。最近では、トウネズミモチが野生化して、問題化しつつある。
樹木は野生化のリスクが低いと考えるのは、早計かもしれない。
外来種に関しては、大陸間の比較研究が重要だと、あらためて感じた。

なお、ニューイングランド外来種に関しては、IPANEのウェブサイトで詳しい情報を知ることができる。IPANEのロゴマークに描かれているのは、赤い果実をつけたツルウメモドキである。