天目山再訪、植物相の類似についての考察、そして再び夜宴

昨日は、天目山を再訪し、午前中は山麓の林内を歩いた。前回以上に、九州との共通性を実感した。草本に関しては、共通性があるというよりも、基本的に同じである。同種の割合は9割近いだろう。低木になると、違いが目立つ。日本の種に似ていても少し違っていて、別種で分けられていることが多い。「クロモジ」も「ヒサカキ」も別種だ。高木になると、もっと違う。コウヨウザン、フウなど、150万年くらい昔に日本から消失した第3紀要素が目立つ。隔離されていた時間が同じなら、世代時間の短い草本のほうが早く分化するはずである。しかし事実は逆である。ということは、草本のほうが隔離されていた時間が短い(最近まで移住があった)と考えざるを得ない。最終氷期東シナ海の北部が陸化したとき、現在の大陸棚のうえに森林が成立したが、それは亜寒帯か冷温帯の森林だったと考えられている。しかし、暖流が洗う沿岸部には暖温帯の植生が成立した可能性がある。そのベルトを通じて、分散力の高い草本は相互に移住したのだろう。
ミズヒキ、イノコズチ、ケチヂミザサ、ヌスビトハギ、ミソナオシ・・・これらは動物に散布される「獣道」植物だ。陸化した大陸棚を通じて、すみやかに移住したのだろう。
天目山の植物分布に関する共同研究の話は、かなり本格的な対応を要求されそうである。昨夜初めて知ったのだが、天目山自然保護管理区では、天目山植物誌を編集するプロジェクトをスタートさせるそうだ。昨夜はそのプロジェクトをスタートさせるためのミーティングが自然保護管理区事務所で開かれ、浙江省のさまざまな大学・研究機関にいる植物分類学者が天目山麓に集結した。この会合に同席する機会を得たので、天目山植物誌計画に参画する多くの研究者と知り合いになる(=「乾杯」を繰り返す)機会を得た。これは幸運だったと言うべきなのだろう。
それにしても、夜宴に次ぐ夜宴である。中国で仕事をするには夜宴が欠かせないのだ。これは、酒豪ではない私にはかなりつらいものがある。しかし、天目山をはじめ中国の植物はあまりにも魅力的なので、中国との共同研究を実行に移すつもりである。ここまで来たら、あとには退けない。
これからホテルを出て、Fu教授と食事をしたあと、上海空港に向かい、6時発の便で帰国する。