ヤクノヒナホシ

yahara2007-11-20

10月28日のブログで紹介した、ヒナノボンボリ属の新種には、ヤクノヒナホシ(屋久の雛星)という名前をつけた。
先週後半に、研究プロジェクトの現地報告会のために屋久島を訪問したところ、発見者Yさんの友人のNさんから取材を受け、あれよあれよという間に、南日本新聞に発表されてしまった。ヤクシカ問題の取材で屋久島入りしていた朝日新聞NHKの記者からも、南日本新聞を見たのでぜひ話を聞きたいと言われ、取材に応じた。NHKではテレビで報道されたようだ(あたりまえか)。
論文を投稿しないうちに名前が出てしまったので、予定をはやめて金曜日中に大学に戻り、かきかけの記載論文の完成を急いだ。
週末は、今津干潟のワークショップ、国立公園に関する原稿のしめきり、グローバルCOE学内ヒアリング準備(月曜9時からヒアリングを受けた)、授業の準備などなどで忙しかったが、気分転換に原稿の加筆・修正を続け、ついに今日、投稿にこぎつけた。雨男のTくんと共著の論文。屋久島での野外実習でTくんを教えたとき、まさかヒナノボンボリ属の新種を一緒に記載することになろうとは、夢にも思わなかったな。
二人して屋久島に出かけるまでの顛末は、それなりに緊張感ただようものだった。以下は、Tくんからのメール。10月24日に「ホシザキシャクジョウ11株発見」(→10月28日のブログ)を知らせ、屋久島行きの提案をしたことへの返事である。

  • メールを見るのが遅くなってしまいました。屋久島=鹿児島便がもう空いていない!!!!
  • 屋久島=鹿児島便をキャンセル待ちにしました。金曜日まで待って、 駄目ならあきらめます。
  • 装備はどのくらいのものを予定したらいいでしょう(雨具は必携として)。
  • いきなり台風が発生しました。どうもご迷惑をおかけします。

私は土曜日には東京にいて、JSTでの会議に出てから最終便で鹿児島に飛ぶ予定だったので、時ならぬ台風の関東来襲にあせった。会議終了後に空港にかけこみ、変更できない特割切符を、台風を理由に変更してもらって、無事鹿児島にたどりつくことができた。
このような顛末は、きっとそのうちTくんがエッセイに書いてくれることだろう。
ヤクノヒナホシという名前は、我ながら、うまくつけたと思う。何しろ、近縁種に「ヒナノボンボリ」、近縁属に「タヌキノショクダイ」という妙名がつけられている。命名にあたっては、これらの名前に負けないものにしたかった。
「ヤクシマホシザキシャクジョウ」では長すぎるし、「ヤクノボンボリ」では芸がなさすぎる。
ふと、「ヤクノヒメボシ」という案を思いついた。早速、Tくんにメールで提案した。

  • 和名ですが、「ヤクノヒメボシ」というのはどうでしょうか。「ホシザキシャクジョウ」と関連づけるうえで、「ホシ」という単語を使いたいと考えているうちに、思いつきました。
  • 「ひめぼし」と「ぼ」に濁るのかどうかだけ気になりますが、基本的にはこの発想でいいと思います。
  • 濁音は私もその後気にかかり、「ヤクノヒメホシ」のほうが良いかなと考えていたところでした。さらに、なんとなくですが、「ヤクノヒナホシ」のほうが響きが良いように思います。また、「ヒナノボンボリ」の「ヒナ」と「ホシザキシャクジョウ」の「ホシ」をつなげたという説明もできます。いかがでしょうか。

このような経緯で、「ヤクノヒナホシ」に行き着いた。取材に対して、ヒナノボンボリから「ヒナ」を、ホシザキシャクジョウから「ホシ」をとって名前をつけた、という説明をしたが、実は最初の案は「ヒメボシ」だったのである。