待望のライデン訪問、分布モデルの重要性

三元日は、大量の書類を読んで過ごした。何とか今日で、ある用件に片がついた。しかし別件で、あと一箱ほどの書類を読まなければならない。
さきほど、短い原稿を書いて、メールで送信した。このほかに、急ぎの原稿が少なくとも2件、あずかっている論文原稿が5編。
明日から8日までは、オランダ出張。オランダ国立植物標本館(ライデン)を訪問し、東南アジアの植物分布の網羅的モデル化に関する共同研究の相談をする。ライデンの植物標本館は、アジアの植物標本を大量に保有していることで有名だ。日本の植物に関しても、シーボルトが採集した多くのオリジナル標本が保管されている。ライデンの植物標本館では標本情報のデジタル化を積極的に進めている。ボルネオに関してはすでに、66262点の標本記録が緯度経度情報に変換され、これから重複を省いても、44106点の分布記録が得られた。これらをもとに2273種についての分布モデルが作られている(Raes 2009)。この研究を発表したNiels Raesとは、昨年、バリ島でのATBC会議で会った。今回は、彼のラボを訪問して、具体的な共同研究の相談を進める。
日本の植物分類学分野では、分子系統学の導入は進んだが、分布モデルの導入は遅れている。分布モデルにもとづく生物地理学的研究に関しては、おそらく私とI君以外には、その重要性を認識している植物分類学者はほとんどいないのだろう。
次年度からスタートする環境省の戦略研究開発では、アジアの植物レッドデータブック編集をひとつの目標にする。この目標を達成するには、東南アジアの植物分布の網羅的モデル化が不可欠である。この研究は、植物相や植物地理学の研究を大きく変革するものになるだろう。