生物多様性観測のこれから

ハノイで開催された第10回GEOSS-APシンポジウムの3日間の日程を終えました。昨日は、生物多様性・生態系のセッションの議長を終日つとめ、今日は全体会議で2回ステージに登壇し、一度目は昨日のレポート、二度目はパネラーをつとめました。
今回は、中国が国をあげて推進するAOGROSSとの調整という課題と、生物多様性観測体制を実質的に拡充するためのLTERとの連携強化という大きな課題がありました。中国はもうすこしアグレッシブに成果を出してくるものと期待していたのですが、資金とマンパワーを投入し、衛星を使ってできることをひととおりやっているという印象を受けました。生物多様性・生態系の観測に関しては、はっきり言って、衛星でわかることはかなり限られるます。もちろん、衛星の強みはあり、それを生かすことはとても大事ですが、これからの生物多様性観測研究にイノベーションをもたらすのは、私は衛星観測ではないと考えています。
中国の科学は、いまや日本よりお金もマンパワーもあって、その点では勢いがあります。でも現状では、アイデアで勝負すれば日本に強みがある領域は多いように思います。いずれは、中国のぶあつい研究者層の中から、すごいアイデアを出してくる人材が生まれるでしょうから、そのときは本当に(良い意味で)脅威になると思います。
石川智士さんのエリア・ケイパビリティに関する実践をかねた研究の話は、とても魅力的でした。プロジェクトの初期にお話をうかがったことがありますが、その後研究と実践が進み、ローカルな漁業者の収入を増やし、コンフリクトを解消しながら、モニタリングを実施するというすばらしい成果が出ています。これは日本ならではの、とてもオリジナルな研究ですね。英語の論文になっていないので、早く論文を書いてくださいとお願いしました。本を出すことに時間を割いてきたので、論文が遅れたとのことでした。

に本が紹介されています。読んでみようと思います。
Future Earthが重視するtrans-disciplinary研究のひとつの新しい形だと思いました。
ホテルに戻ってから、GEOBON本部かが届いたコンセプト論文の原稿を読んでコメントしました。生物多様性観測のこれからについて書いた論文の原稿です。遺伝的多様性のセクションについては、不正確な記述にもとづいて現状批判が書かれており、まったく納得がいきません。ひとまずコメントを戻しました。全面改訂して良ければ書き直すよ、と書いておきました。また、国別の生物多様性観測ネットワークを立ち上げるうえでの標準的なプロセスが提案されているのですが、上から枠をはめる提案で、まったく納得がいきません。We need more flexible, more participatory, and more careful approaches to develop agreements with stakeholdersというコメントを送りました。
明日から、ハノイ近郊にあるBavi国立公園に移動して、植物多様性のトランセクト調査をやります。楽しみです。