ヒトとネアンデルタール人の交雑についてのより強力な証拠

ネアンデルタール人ゲノム解読プロジェクトを進めているマックス・プランクのチームによる最新の研究成果がサイエンス誌に発表された。その結果は、ヒトとネアンデルタール人が交雑していたことを示唆している。
研究チームのウェブサイト(http://www.eva.mpg.de/neandertal/index.html)には、以下のように控えめな表現で、この結果が紹介されている。
Results indicate that Neandertals are slightly more closely related to modern humans outside Africa. The team also identified several genomic regions that appear to have played an important role during human evolution.
ヒトのミクロセファリン遺伝子に関しては、ネアンデルタール人からの遺伝子浸透の可能性が以前から指摘されていたが、この証拠については批判もあり、論争の的となっていた(http://d.hatena.ne.jp/yahara/20080207)。今回の証拠はゲノムの6割程度を比較した結果なので、より強力だ。詳しい結果については、論文を読んでから判断する必要があるが(まだ自宅なのでサイエンス誌自体にアクセスできない)、画期的な研究成果だと思う。
MAX PLANCK SOCIETYのプレスリリース(http://www.eva.mpg.de/neandertal/press/presskit-neandertal/pdf/PR_MPI_Neandertal_EN.pdf)によれば、ヒトゲノムの1−4%がネアンデルタール人由来と推定される。また、交雑は10万年前から5万年前に起きたと推定される。この期間は、レバント(現在のレバノン周辺)にヒトがアフリカから進出したものの、ネアンデルタールに再度置き換わったとされる時期に相当する。最終的にアフリカからヨーロッパ・アジアにひろがったヒトの祖先とアフリカのヒトとの分岐(つまりアフリカを出た年代)は、ミトコンドリアゲノムから、約5万2千年前と推定されている。一方、ニューギニアでは、約5万年前にすでにヒトが移住していたことを示す遺跡が見つかっている。アフリカからニューギニアまで、わずか数千年で移住したことになる。このような従来のシナリオは、今回の発見によって修正されるかもしれない。