病気・共食い・人類史

感染症の流行がネアンデルタール人の絶滅を促進したのではないか」「カーニバリズムが感染症を流行しやすくしたのではないか」というアイデアについて、先行研究がないかどうか調べてみた。

グーグル・スカラーで検索したところ、サイエンス誌に掲載された以下の論文がヒットした。

Science 11 April 2003: Vol. 300. no. 5617, pp. 227 - 228
News of the Week
GENE EVOLUTION:
Cannibalism and Prion Disease May Have Been Rampant in Ancient Humans
Elizabeth Pennisi
Epidemics of prion diseases--possibly spread by cannibalism--plagued prehistoric humans, a team proposes online in Science this week. Analysis of the worldwide distribution of the prion gene suggests that two gene variants have undergone "balancing selection" through exposure to toxic prions.

Science 25 April 2003: 640-643 |
Reports:
Balancing Selection at the Prion Protein Gene Consistent with Prehistoric Kurulike Epidemics
Simon Mead, Michael P. H. Stumpf, Jerome Whitfield, Jonathan A. Beck, Mark Poulter, Tracy Campbell, James B. Uphill, David Goldstein, Michael Alpers, Elizabeth M. C. Fisher, and John Collinge

この論文は、ホモ・サピエンスの初期進化の過程で、共食いを通じてプリオン病が流行したことがあったのではないかと主張しているようである。ネアンデルタール人の絶滅と関連づけられているかどうかは不明だが、このような論文が出ている以上、先日私が記したアイデアは、すでに誰かによって着想されているだろう。

なお、コメント欄で、共食いの進化と感染症の関係を理論的に調べた研究はないかという質問を受けたが、そのような研究はすでにある。グーグル・スカラーで、"cannibalism""evolution""disease"をキーワードに検索すれば、すぐに代表的な論文が見つかる。

とはいえ、このテーマは、まだまだ発展途上である。これまでは、サンショウウオや魚などの共食い現象に興味を持った研究者が、ほそぼそと研究してきた。人類進化にも関係することに気づく人が増えれば、もっとメジャーなテーマに成長するだろう。