花にもぐるスズメガ

昨日、福岡市の天気は終日曇り。実験集団には、昼間はアゲハ類、夕暮れ時にはスズメガがかなり頻繁に訪花し、しっかりとしたデータがとれた。
アゲハ類は、見ているとなかなか来ないか、来てもすぐに立ち去るが、ビデオ映像では、いくつもの花をまわっている。観察者がいると、行動が変わるのかもしれない。今後のポリネーション研究では、ビデオ撮影が必須の手段になるだろう。
スズメガ類の観察のために購入した投光器は、実験集団の近くに設置すると、スズメガの行動に影響するかもしれない。実験集団の近くに設置した初日には、スズメガは花に近づいても、吸蜜はしなかった。
その後は、圃場に乗り入れている車のライトで、実験集団を遠くから照らして、ビデオ撮影している。このやり方で観察したところ、一昨日も、昨日も、スズメガは実験個体の花に頻繁に訪問した。しかし、ライトを照らさないときと、行動がまったく同じかどうかはわからない。比較的明るいうちに訪花しているケースの映像(ライティングはしていない)と比較して、違いがないかどうかチェックする必要がある。
スズメガの訪花は、天候にもよるが、通常は7時半から8時にかけてがピークである。8時を過ぎると、訪問数が激減する。そこで、観察はほぼ8時に打ち切っている。昨夜は8時すぎてから、スズメガの撮影を試みた(撮影をすれば、行動が変わる可能性が大きいので、8時まではカメラを向けていない)。
写真は8時35分に撮影したもの。スズメガがハマカンゾウの花にもぐりこんで吸蜜している様子をとらえることができた。

一見、左の翅がないように見えるが、真横から見た羽が内花被弁の縁と重なっている。
スズメガは、多くの花ではホバリング(水平停止飛行)をしながら吸蜜するが、キスゲの花で吸蜜するときには、写真のようにもぐりこむ。キスゲの花は、ハマカンゾウの花よりも開き方が小さい。これはスズメガをもぐりこませるための工夫なのだろう。ホバリングしている状態では花粉や柱頭がスズメガの翅になかなか触れないように思う。この点は、訪花行動を近くからビデオ撮影すれば、かなりはっきりとわかると思うが、当面は36株全体を撮影する方法で、ポリネータがハマカンゾウとF1のどちらを好むかを調べる。
これまでの観察から、アゲハ類は花が赤いハマカンゾウを、スズメガは花がより黄色いF1(キスゲ×ハマカンゾウ)を選ぶ傾向が認められる。
夜8時台に実験を終えてから、柱頭を採集して、花粉がついているかどうかをチェックしている。一昨日までは、チョウやガの鱗粉がついていて、訪花し柱頭にふれたことまでは確認できたが、肝心の花粉がほとんど確認できなかった。これは、雨に濡れたために、やくの花粉がうまく運び出されていないのだろうと考えていた。昨日は終日、雨が降らなかった。すると、チョウやガが訪花した花の柱頭には、しっかりと花粉がついていた。めでたい。
今朝の天気予報では、大雨の予報だったが、今は晴れ間が見えている。夜8時ころまで、何とか降らずにいてほしい。
あと4〜5日、昨日の水準のデータがとれれば、説得力のある結論が出せそうだ。
梅雨前線の活動が弱まることを祈ろう。

※いつのまにか、はてなダイヤリーに無料でアップロードできる画像のサイズが大きくなっていた。写真は57kBに画像の質を落としたもの。