アゲハが選べばスズメガも選ぶ

スズメガがF1雑種を選ぶ日と、まったく選ばない日があるのはなぜか?
このような「謎」(一見説明がつかない現象)について推理するのは楽しい。
まず思いつくのが天候の影響だが、残念ながら、天候ではまったく説明がつかない。
いろいろな可能性を考えてみた結果、アゲハの訪花頻度が高い日には、スズメガがF1雑種を選ぶのだろうという仮説に行き着いた。一昨日、この仮説を一緒に実験しているYさんとAさんに話したところ、「スズメガはいったいどうやってアゲハがきた花を見分けるのですか」という質問がかえってきた。この質問への答えも、もちろん考えている。
ちなみに、YさんとAさんは、岐阜大学のKさんの学生で、わざわざ岐阜から、ハイビジョンカメラ2台、三脚、パソコン、などを車に積んで、実験にかけつけてくれた。彼女たちのおかげで、実験は予想した以上の成果を収めつつある。
ハイビジョンカメラの威力は抜群だが、記録された映像を、記録したのと同じ時間をかけてチェックして、どの花にいつどの昆虫が訪問したかをデータ化する作業をこなさなければならない。
画像の差分をとって、アゲハやクマバチが来た時間の前後の画像を抽出するプログラムを書けば、作業は格段に効率化されるが、いまはまだ、その用意ができていない。
もっとも、画像で昆虫を見分けるソフトの開発は、まだまだ研究段階の技術である。正確を期すには、人間の目によるチェックが欠かせない。
さて、私の仮説の妥当性を判断するには、21日のように、アゲハ類が頻繁に訪花した日のデータが必要である。しかし、一昨日も、昨日も、アゲハ類はさほど実験集団にやってこなかった。
おそらく、九大箱崎キャンパスとその周辺には、ヤブガラシノブドウなど、アゲハ類の蜜源植物がたくさんあるので、いくら赤い花で宣伝をしてみても、量で勝るヤブガラシノブドウなどにはかなわないのだろう。
今日こそは、アゲハ類に来てほしい。
そう願いながら、1時間ほど、実験集団を眺めていた。すると、朝9時過ぎだったと思うが、クロアゲハがやってきて、ていねいに花をまわり始めた。明らかに、ハマカンゾウの赤い花を選んでいる。
私の仮説が正しければ、今夜のスズメガは、F1雑種を選ぶはずだ。
結果は、見事に、私の予想どおりだった。
7時半すぎから、実験集団に頻繁に訪れたスズメガ類は、明らかにF1雑種の花を選んでいた。
アゲハ類が訪花したことを、スズメガ類はわかっているのだ。
いったいどうやってわかるのか。
私は、これしかないという答にたどりついた。このアイデアをYさんやAさんに話すと、納得してくれた。
もちろん、さらに検証データをとる必要があるが、まず間違いなく、真相にたどりついたと思う。