科研費のあり方

昨日は午後から上京し、日本学術振興会「生物系科学専門調査班会議」に出席し、懇親会に出たあと、生態学会大会開催地の新潟に来た。この会議は、生物系分野のプログラムオフィサーが集まる月例の会議である。私は4月から日本学術振興会学術システム研究センター専門研究員(いわゆるプログラムオフィサー)を拝命する。したがって、まだ正式な委員ではないが、引継ぎをかねて参加した。
プログラムオフィサーの仕事のひとつは、科研費や特別研究員の審査員候補者を選ぶことである。科研費の審査員は、以前は学会からの推薦にもとづいて、日本学術会議が選んでいたが、2年半前の日本学術振興会プログラムオフィサー制度の発足後に、日本学術振興会がプログラムオフィサーからの候補者推薦にもとづいて選任する方式にあらためられた。これはかなり大きなシステム変更であり、日本学術会議側からは当然反発があったと聞いているし、諸学会の間でも、学会からの推薦なしで適切な審査員の選定ができるのかと疑問を抱く意見を聞いた。
もちろん、データベースがなければ、プログラムオフィサーだけの人脈で選ぶことになり、適切さを欠くだろう。そこで、科研費基盤研究を受けている研究者が、学会から推薦された研究者に関するデータベースが作られており、その中から候補者を選ぶようだ。私はまだその作業に関与していないので、詳細はわからないが、現在得ている知識の範囲では、きわめて公平かつ適正な選考がなされていると思う。
日本学術振興会学術システム研究センターが発足した時点では、生物系科学専門調査班のメンバーは4名だったそうだ。懇親会で、発足当時の苦労話を聞いた。4名で生物系全分野をカバーするのは、さぞかし大変だったろう。
現在では、2名の主任研究員(プログラムディレクター)と、7名の専門研究員に増員されている。第一期の委員の方々の3年間の任期が終わり、私は第二期の委員をつとめる。第一期の委員の方々も、約半数が続投されるので、継承性に不安はない。
科研費のあり方については、かねてからさまざまな意見を持っている。
第一に、「長期研究」という枠組みをぜひ作ってほしい。年間50万円でも良いので、10年間研究を続けられる制度があると、長期観測研究が大きく進展するだろう。
第二に、年2回の申請を可能にし、最初の申請で採択されなくても、審査員からついたコメントに対応して、改善点が評価されれば、半年後の申請で採択されるように制度を変えたい。つまり、論文の審査と同様に、1回でアクセプトかリジェクトかを決めるのではなく、研究計画の改善措置に対して再審査をするのである。
昨夜は、委員会後のフリーディスカッションで、早速この意見を述べた。
これから3年間の任期中に、諸学会・いろいろな方々のご意見を伺いながら、科研費制度の改善に少しでも貢献をできればと思う。また、守秘義務に注意し、どこまでの情報ならオープンにして良いかについて慎重に判断しながら、可能な限り情報公開につとめたいと思う。