アフリカビジネス

日経BPムック
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アフリカ54カ国を一挙解説!
暗黒大陸」は「ビジネス大陸」に変貌した!

私は中南米の調査経験が長いので、中南米諸国の名前はすべて知っているし、地図上の位置関係もわかる。歴史についてもそれなりの知識がある。アジアはもちろんわかる。オーストラリアにも約1カ月滞在したので、その地理・歴史・文化にはなじみがある。北米とヨーロッパはもっとよく知っている。しかし、アフリカだけは苦手。南アフリカ以外の知識はきわめて乏しい。しかし、グローバルリーダー養成を掲げたリーディングプログラムを進めるには、アフリカを視野に入れる必要がある。そこで、この日経BPムックを買ってみた。写真や地図、データが豊富なので、アフリカの現在を知るにはとても良い本だと思う。
冒頭のコリアー博士(オックスフォード大アフリカ経済研究センター所長)の記事は、現代アフリカへの視点を簡潔に提示していて、ありがたい。この記事によれば、2000年当時アフリカは軽視されていたが、その後の資源価格の上昇によりアフリカ諸国での資源調査が進み、原油やガス資源が発見されたという。今後は価格上昇のブームから産出量拡大によるブームへと移行し、それによって今後10年間のアフリカ全体の経済規模は2倍になる。年率7%成長だ。この成長力がアフリカに投資を呼び込み、「暗黒大陸」が「ビジネス大陸」へと変貌した。
パラパラとめくり、記事を斜め読みするだけで、現代アフリカにおける中国の圧倒的存在感が伝わってくる。
アンゴラは、アフリカの中でも中国の進出が特に顕著だ。・・・新植民地主義と批判する声もあるが」という質問に、前産業大臣は次のように答えている。「中国はたくさんの人口を抱えている。その中国が、資金と技術に加えて労働力を供給してくれたからこそ、アンゴラは成長できている。外部の人が何と言おうと、私たちは中国の貢献に感謝している」
ザンビア出身の女性エコノミスト、モヨ氏の指摘が面白い。
米国大使が、同じ国に赴任していた中国大使にこう言った。
「中国は、次の3つの分野でアフリカに貢献すべきだ。1、政治のガバナンス強化と民主主義の発展。2、投資や貿易などによる経済成長の促進。3、医療や教育など社会問題の解決。」
これに対して中国大使はこう答えたという。
「私たちは1と3には興味がない。そもそも自国で非民主的な独自のシステムを採用しているのに、なぜ私たちが民主主義を説いてまわれるか。医療や教育については各国政府の責任だ。私たちは貿易と投資にだけ興味がある。政治システムを進化させる必要はあるだろうが、それは部外者が口を出す話ではない」
そして、モヨ氏は「中国大使の回答はまったく正しい。最近、中国のアフリカ進出を新・植民地主義と批判する向きもあるが誇張しすぎだ。中国はアフリカの政治に興味はない。関心があるのは、経済成長だけだ。・・・過去60年にわたる現実を無視した西欧の政策によって、巨額の資金が無駄になり、多くの人が亡くなってきた。なぜ今日、中国が欧米諸国を出し抜いてアフリカの経済開発で先頭を走っているのか。それは中国こそ、アフリカの現実に適応した手法を用いているからだ」と結んでいる。
この記事と対比して、「ウガンダの父」の悲しき今、を読むと、やるせない気持ちになる。ウガンダは繊維産業の振興を国是としてきた。そのウガンダで、何度もの政変・内戦をくぐりぬけ、ウガンダ人と心を通わせながら、命がけで繊維産業を育ててきたのが、フェニックス・ロジスティクス社長の柏田雄一さん。クーデター後に「ガンダ族を出せ」と銃口を突き付けられても、頑として「ノー」を貫き、従業員を守った。政府高官に「カシワダを生かしておくな!」と言われる状況となり、いちどは帰国するものの、15年の歳月を経て1999年に新大統領に請われ、再度ウガンダへ。しかしその空白の15年間に、中国産の安いシャツが売られるようになり、価格競争で勝てない状況が生まれていた。その状況に追い打ちをかけたのが、石油資源の発見。「持たざる国」が資源国へと変貌し、国策は繊維産業から石油にシフトした。
いま日本がアフリカで何をすべきか、それを考えるには、必携の一冊だ。