杭州西渓国立湿地公園

先日のブログに対して、kumagerasuさんから、「中国は今後数十年の経済発展のなかで、非常に大きなマイナスを地球環境と生物多様性に与えるのではないかという危惧を私は抱いています」というコメントをいただいた。コメントからたどって、「中国の環境問題 抗いがたい潮流」も読ませていただいた。
このような危惧は、日本では広く流布している。私もkumagerasuさんのように考えていた一人である。しかし、実際に中国を訪問し、フィールドをまわってみると、これまで多少ならず偏った情報を受け取っていたと感じた。
たとえば、北京の次に訪問した杭州では、西渓という場所に、国立湿地公園を開園し、減少した湿地を再生している。その面積は、10平方キロであり、東京都中央区の面積に匹敵する。都市中央に位置する湿地公園としては広大といってよいだろう。
中国通信社の記事によれば、「2002年から、杭州市は40億元を投入して、西渓湿地の保護・回復をはかる計画を立てた。2003年9月、論証を繰り返した末、西渓湿地総合保護第1期工事が正式にスタートした。2007年までに計3期の保護工事が完了し、良好な生態環境が再現される見込み」だという。
人民網日本語版によれば、2005年には西渓湿地公園に中国最初の湿地生態気象ステーションが設置され、27の観測プロジェクトを担当することになっているという。
また、中国網によると、国家林業局は、杭州西渓湿地公園に続いて、2006年までに江蘇省諸ャ湖湿地公園、寧夏回族自治区銀川国家湿地公園を開設した。国家林業局の趙学敏副局長は「今後は黄河周辺の湿地を重点的に回復し、湿地の水資源涵養機能を発揮させ、湿地周辺の土壌の退化と砂漠化の趨勢を抑制していくことを考えている」そうだ。
黄河の行き過ぎた水利用問題は、確かに深刻だが、中国政府は国家事業としてその対策に乗り出し始めているようだ。
この国では、土地はほとんどが国有地である。行政上も国による強力なトップダウンが可能なので、国の方針が変われば、対策も早いのではないか。
杭州空港に降りる前に、田園地帯の上空を飛んだ。そのとき印象的だったのは、田園地帯に、瀟洒なアパートが延々と立ち並んでいたことだ。杭州から上海への陸路移動の際に確認できたが、平屋建ての農家はもはやほとんどなく、農民はみなアパートに移り住んでいるようだ。
杭州西渓国立湿地公園にも農地がたくさんあったそうだが、いまはすべて湿地再生の対象とされている。おそらく農家はみな他の土地をあてがわれ、アパートに移ったのだろう。
もちろん、まだ多くの問題をかかえた国であることは確かだが、国家重点政策として環境対策をとっている点では、日本の高度経済成長時代よりもはるかにましである。
私は大きな希望を抱いて帰国した。