生態学会で本を買おう

生態学会参加中のみなさん。発表の合間にぜひ書籍ブース(会場6階)に足を運び、本を買いましょう。最近では、生態学関連の良書がたくさん出版されています。私が学生のころには、生態学関連の良書はごくごく限られていたので、今の若い世代がうらやましいです。

私の「一押し」は、以下の本。昨年に出版された本ですが、ここ数年で出版された生態学関連書籍の中で、ダントツに面白い。この執筆陣は豪華ですね。生態学の新時代を切り拓いている若手研究者が顔をそろえ、自分の研究内容を熱く語っています。このシリーズ(種生物学シリーズ)は、論文では書けない、リアルな研究現場の興奮を伝えることをコンセプトにしていますが、このコンセプトが見事に結実しています。しかも、以下の本で取り上げられているテーマはどれも意外性に満ちていて面白く、しかも研究の水準が傑出したものばかり。生態学を学ぶ大学院生には、必読の一冊です。

種間関係の生物学 共生・寄生・捕食の新しい姿
1章 形を変えるオタマジャクシ:操作実験からのアプローチ(岸田 治)
2章 右と左の共進化:追いかけるヘビと逃げるカタツムリ(細 将貴)
3章 リーフマイナーの食性の進化を探る:野生生物を用いた実験系確立ストーリー(大島一正)
4章 虫えいをめぐる昆虫群集(杉浦真治・山崎一夫
5章 タイの熱帯季節林における大型の果実食鳥類サイチョウ類による種子散布(北村俊平)
6章 魚による農業:サンゴ礁におけるスズメダイとイトグサの栽培共生(畑 啓生)
7章 花の匂いが結ぶ植物と送粉者のパートナーシップ(岡本朋子)
8章 サトイモ科とタロイモショウジョウバエの送粉共生(高野宏平)
9章 キノコ類の隠れた種:共生する植物との相性を紐解く(佐藤博俊)
10章 マルカメムシ類と腸内細菌イシカワエラの絶対的共生:切り貼り自由な共生システム(細川貴弘)
11章 野生生物からのDNAおよびRNA抽出
12章 花の匂いの捕集方法
13章 リーフマイナーの自然史と採集法、飼育法、標本作製法

もう一冊のお勧めは、これ↓。

これは、発展著しいエコゲノミクスの教科書です。この分野について体系的に学びたい人には、お勧めの一冊です。私も「第1章 野外実験:適応研究の古くて新しいアプローチ」を執筆しました。
日本生態学会が編集しているシリーズの一冊。このシリーズ(http://www.kyoritsu-pub.co.jp/series/111/)は、生態学を学ぶ現代の世代の若手が知識を共有するための教科書というコンセプトで企画されたものです。教科書として現時点での到達点を体系化するという役割に加え、フロンティア分野の興奮を伝えることを意図しています。このため、生態学会宮地賞歴代受賞者をはじめとする有力な若手研究者が責任編集を担当しています。