久しぶりの伊都キャンパス・屋久島の新たな異変・カンボジアでの課題

昨日は大学院説明会のため、久しぶりに伊都キャンパスを訪問した。しかし、夕方から雨になったこともあり、生物多様性保全ゾーンを訪問する機会が持てなかった。

今日、いくつかの懸案を片付けたあと、4時ころからもういちど伊都キャンパスに出かけ、生物多様性保全ゾーンを訪問した。昨夜来の雨があがり、青空がひろがり、とても気持ちが良かった。ちょうどフジの花が満開。常緑林の林冠は、シロダモの赤い新葉、スダジイの白い新葉、タブの黄緑色の新葉と花などで、ただでさえ彩りが豊かなところに、林冠をつたって伸びたフジの花房が、すがすがしい紫のアクセントを添えていた。
この斜面は、私が最初に訪問したときには、モウソウチクが多量に進入し、森林がかなり傷みはじめていた。福岡グリーンヘルパーの会の初期の活動で、この斜面からモウソウチクを駆除した。その結果、見事な美しい森がよみがえった。
※右上の写真は小型のデジカメで撮ったのだが、木々の色あいの違いがあまり表現できておらず、フジの紫もよく見えない。残念。
思わず立ちつくすほどの美しさだったが、その生物多様性保全ゾーンにいたのは私ひとり。せっかくキャンパスの中に、こんなすばらしい場所があるのだから、もう少し利用されるようにしたいものだ。
COP10の準備が始まった2009年ころから国際対応に忙しくなり、伊都キャンパスでの仕事がすっかり停滞してしまった。グローバルCOEもあと2年なので、今年から伊都キャンパスを使った教育研究にももっと力を入れたいと思う。
一方で、屋久島の生態系管理についても、今年は本腰を入れて取り組む必要が生じた。4月11日〜17日に屋久島を訪問し、こちらでも久しぶりにフィールドを訪問した。すると、2006年にツルラン481株をマークして地図に記録した場所で、ツルランがほとんど消失していた。初日にはたった1株しか発見できなかった。その後、Tさんらの協力を得て、5名で捜索した結果、シカにほとんど食べられてはいるが、何とかまだ生きている個体を37株確認した。とはいえ、10%未満への激減である。この地域は、屋久島において豊かな林床植生が残る最後の場所だった。思えば、屋久島にも、COP10の準備が始まった2009年以来、調査に来ていなかった。この3年ほどの間に、屋久島ではさらなる激変が進んでいた。
この3年間、世界自然遺産地域科学委員会の委員長として、会議では何度も屋久島を訪問していたが、会議で議論している間に、現実は大きく変化していた。やはり現実をしっかり見続ける必要がある。
屋久島でのヤクシカ駆除に関して、個体数管理ばかりを目標にしており、生態系管理を考えていないという批判がある。もっともな批判だが、ではどうするかを考えて、生態系管理を実行に移す必要がある。もはや待ったなしの状況となったので、屋久島の生態系管理に本格的に取り組む。
加えて、カンボジアでは、新種の宝庫であることが判明しつつあるボコー国立公園で、開発と保全の両立を提案し、実現に向けて動く必要がある。新種の宝庫である頂上部に、カジノ場建設を含む大リゾート開発が進行しているのだ。5月にはこの場所の調査に出かける。
分身の術が使えると良いのだが、そうもいかない。とすれば、いろいろな人の協力を得るしかない。みんなが夢を持って、やる気を出して仕事ができるようにするのが、私の大事な役割なのだろう。