生態学のレポートチェック

後期の「生態学」の成績をつけるために、レポートを全部読んだ。出席・レポート点をつけ、すでに採点を終えている試験の点を合計して、成績評価作業を完了した。今年度は、授業後に提出してもらうレポートを次の週までに読む余裕がなく、今日まで貯めてしまったので、レポート読みに半日かかった。しかしそのおかげで、学生たちがいろいろなテーマに興味を持ってくれたことが、授業全体を通じて把握できた。有性生殖に病原体に対抗する適応的意義があることに驚いたとか、花が昆虫を操作していることに驚いた、など、驚いてほしいところにちゃんと驚いてくれている学生が多かった。オスとメスで生存率が違ってもESS性比が1:1からずれないことに興味を持ったとか、タカハトゲームの利得行列が最初はよくわからなかったけど、よく考えたら納得がいって面白い、などの感想を書いてくれた理論好きな学生も結構いた。精子の掻き出しやライオンの子殺しなど、性淘汰関連の話はやはり注目の的だ。大学院生のKさんに担当してもらった回は、いちばん評判が良かった。授業の途中で考える時間が設けられたのが良かったという感想もあり、授業の組み立てにかなり工夫をしてくれたようだ。予測→検証を繰り返す研究の面白さが伝わったという感想もかなり多かった。保全の研究は絶滅危惧種が対象と思っていたので、増えすぎたシカを管理する研究は意外だったが、その意義がよくわかった、という感想もいくつかあった。一方で、駆除はかわいそうという意見や、自然に人間が干渉することがどこまで許されるのか、という疑問もあった。そのあとの回で、私が紹介した九大伊都キャンパス生物多様性保全事業の話も、多くの学生が興味を持って聴いてくれたことがわかった。全種保全を目標に、森林や池を移設するという世界でも例のないことをやったキャンパスだということを知り、伊都キャンパスの自然に関心を高めてくれた学生が多かったようだ。最後の回は、今年はじめての試みとして、「決断科学のすすめ」の要点を紹介したが、この講義も興味を持って聴いてくれた学生が多かった。生態学が、人間の意思決定や行動、感情や性格などの理解に役立つこと、社会的対立の背景を理解することにも役立つことが、紹介できたと思う。私が生態学の授業を担当するのは、残すところあと3年となったが、毎年改善を重ねて、さらに良い講義にしていきたい。