若者にとって今は昔よりずっと良い時代

GEOSS-APシンポジウム(4月2-4日)と環境省プロジェクトの三役会議(5日)を終え、6日は久しぶりに九大に出勤した。実に、3月17日以来。3月は1週間しか九大に出勤しなかった。こんなに出張を続けたのは、初めて。
6日の午前中は、大学院(システム生命科学府)の入学式に出て、生命理学講座主任として挨拶をした。新入生に対して、何か元気が出るメッセージを送りたいと考えて、「若者にとって今は昔よりずっと良い時代だ」という話をした。

今は若者の就職難だ、学位をとってポスドクになってもなかなか就職できないなどという話を聞くと、若者にとって状況が悪化していると思うかもしれないが、そんなことはない。いま、若者の人口は減っている。ということは、若者ひとりあたりの可能性はひろがっているということだ。私が大学院に入ったころのほうが、若者の人口が多く、それだけ競争も激しかった。学位をとっても、ポスドクにすらなれなかった。今は多くの学位取得者が、ポスドクのポジションについて、研究を続けられる。昔よりもずっと良い。私が大学院生のころは、指導教員の中にNatureに論文を書いている人はいかなった。今はシステム生命科学府にもそういう先生方がたくさんいらっしゃる。教育・研究のレベルは格段に高くなっていて、昔よりずっと良い。また、世界中を簡単に旅行できる。世界を飛び回ってみると、世界各地で日本人が活躍しているし、日本人の活躍が求められている。視野を世界に向ければ、みなさんの可能性はもっと大きくなる。ぜひ、世界を飛び回って、自分の可能性をひろげてほしい。

およそ、このような趣旨の挨拶をした。このあと、K先生が私の話を受けて、高校教諭の採用試験を受けて不採用になったことを紹介し、昔は高校の先生になるのは今よりもずっと狭き門だった、という話をされた。これは本当だ。私も大学院を出てたあとの進路として、高校教諭を選択肢の一つに考えたことがあるが、採用枠の少なさと競争率の高さを知って愕然とした経験がある。今のほうが、若者の人口が減っている分、競争は緩和されている。
就職支援センターのスタッフの方からの講演で、ウェブでエントリーする制度が普及してから、就職活動は学生にとっても企業にとっても負担が大きくなったという説明があり、この話にはなるほどと思わされた。

今は50社でも100社でも簡単にエントリーができるので、就職活動をする学生は、関心がある会社に片端からエントリーしがちである。その結果、企業側は、何百何千という多数のエントリーの中から、面接候補を選ぶことになる。その選考には、あまり時間・労力をかけてはいられない。また、面接にあたっても、学生は複数の会社から呼ばれていることが多い。学生の方には、この会社こそ、という本気度が不足しがちである。企業の側は、本気度を試す。本気で面接に臨まなければ、なかなか採用されない。その結果、いままで試験に落ちた経験がない学生が面接に不合格になり、落ち込むケースが増えている。面接には、本気を出すことが大事だ。

およそ、このような説明があった。
ウェブでエントリーする制度はたしかに、就職競争を以前よりも厳しくしているのかもしれない。しかし、需要と供給のバランスの点で、いまは若者の供給のほうが減っている時代だ。したがって、若者の側がもっと積極的に主導権をとれる条件があるはずだ。この条件を生かすことを考えてほしい。