飯舘村は避難不要か?

飯舘村「避難不要」 保安院が被ばく量試算

文部科学省の簡易型線量計のデータを基に、震災以降の累積線量を試算した。その結果、同村周辺で最も線量が高い地点の累積線量は50ミリシーベルトだった。これは一日中屋外にいた場合の線量で、日常生活での累積被ばく量はこの半分程度と見ていいという。
原子力安全委の指標では、避難基準は実質的な累積線量が50ミリシーベルト以上。保安院は「一日中屋外で過ごすことは現実的には考えづらく、(水素爆発などが起きた3月中旬に比べて)時間当たりの放射線量も減少傾向にある」と強調した。

このレベルでもなお「避難不要」と保安院が言うのは、不適切だと考える。保安院はリスクについて正確に説明し、判断を政府にゆだねるべきだ。政府は、予防原則の立場にたって、避難に向けた対応を開始する時期に来ていると考える。
id:yahara:20110324で紹介したSPEEDIの試算結果を見てみよう。下図では、同心円と↓、50mSVの表示を私が書き込んだ。

SPEEDIの試算によれば、原発事故発生以来の放射性ヨウ素内部被曝線量は、ずっと屋外にいたと仮定した場合、飯舘村の南半分では100ミリシーベルトをこえるレベルに達している。今回、文部科学省の測定・試算により、「50ミリシーベルト」という数値が出たことは、飯舘村方向に強い線量被曝がひろがっていることを示唆するSPEEDIの試算と合致する。SPEEDIの試算は「ずっと屋外にいた」という強い仮定を置いているので、実際のリスクはこれよりも低いと考えられる。しかし、id:yahara:20110326で紹介したように、100ミリシーベルト以下でも線量に応じて発ガンリスクは高まると考えたほうが良い。また、文部科学省の「50ミリシーベルト」という試算値は誤差をともなっており、より大きな線量の場所があることを想定しておくほうが良い。さらに、同じ線量でもその影響には個人差がある。これらの点を考えれば、「50ミリシーベルト」という試算値はすでに避難を真剣に考えなければならない水準である。また、3月中旬に比べて線量が減少傾向にあるとはいえ、今後も他の地域より高い線量被曝が続くし、福島第一原発の状態次第では、再びさらに高い線量の被曝が起きる可能性がある。保安院はこのようなリスクを正確に説明すべきだ。
上図の試算結果と同心円の関係を見れば、炉心からの距離で避難区域を決めることはもはや適切ではない。炉心の南側の海岸線、および炉心の北西側(飯舘村方面)の地域では、炉心からの距離が同じでも、リスクは他の地域より高い。政府はこの点を考慮して、避難対策を具体化すべき段階である。