特別研究員事業費と科研費予算が増額

スパコンは守られても、科研費と特別研究員事業費は減らされるのではないかと心配していたが、22年度予算で増額が決まった。
→ http://www.mof.go.jp/seifuan22/yosan009.pdf
特別研究員事業費は4億円の増額。科研費は30億円増額され、ついに2000億円を達成した。
国家財政の現状を考慮して科学技術予算を減らすとしても、この2つだけは減らしてはいけない。この点は、多くの心ある科学者の一致した意見だ。この意見が民主党政府に認められたのは、朗報だ。
関連学会と協力して要望書(http://bsj.or.jp/osirase/osirase_open.php?shu=1&did=278)を提出した甲斐があった。

上は、要望書に添付したグラフ。
このグラフを示したことは、インパクトがあったと思う。11月28日にも掲載したが、今回、科学技術基本計画の期間を加えてみた。

日本学術振興会特別研究員PDに関しては、主計局から「支援人数を増やしてきた」という間違った指摘が行われ、文部科学省担当官から「全体通してみますと平成14年度の1579人をピークにむしろ減少傾向にある」というやはり不正確な訂正が行われました。日本学術振興会特別研究員(PD)の新規採用者数は、下図のように2003年から2008年の6年間で半減したのが事実です。1999年のピーク時に比べれば、約4割に低下しています。すでにポスドク一万人計画開始前の水準に低下しており、これ以上、特別研究員PD採用者を減らせば、基礎研究分野における次世代の研究者確保に大きな支障が生じると考えられます。

11月28日のブログへのコメントとして、DCを廃止してはどうかという意見があった。要望書には、「現在の大学院生支援制度が、競争的支援制度(現行の日本学術振興会特別研究員DC1, DC2)、授業料免除、奨学金、RA/TAなど多岐にわたっており、整理が必要だという認識には、私たちも異存ありません。」と書いた。さらに、次のような基本認識を書き込んだ。

博士課程(博士後期課程)の大学院生には、研究指導を受けている学生という側面と、先端研究の担い手という側面があります。この点は、世界各国の大学院と共通する性格です。このような性格を持つ大学院は、教育機関であると同時に研究機関です。したがって、教育というサービスを受けるという点では「授業料徴収」という受益者負担の考え方が生じ、研究の担い手という点では「雇用」(RA/TA、日本学術振興会特別研究員DC1, DC2など)という形態が生じます。このような二重性をどのように整理するかについては、政策的にさらに知恵をしぼる余地があると考えます。

「高校授業料無償化」という民主党の政策との整合性という点では、大学院に関しても授業料免除や奨学金を拡充する案を要求するほうが受け入れられやすいかもしれない。しかし私は、博士課程大学院生は学生であると同時に研究労働者である、という社会的合意をひろげ、「雇用」という形態をさらに拡充するほうが長期的に見て良い効果を生むのではないかと思う。博士課程大学院生に対して、「いつまでも学生のままでいて、働いていない」という見方をするのは、適切ではないと思うのだ。
予算が増額されたからといって、問題が解決したわけではない。事業仕分けを契機として、大学や大学院のあり方について、関係者が真剣に考えて、より良くするための提案を積極的に行うべきだと思う。