ヤッコソウの不思議な花

屋久島調査から福岡に戻り、今日は修士1年生の研究指導に対応。明日の中間報告会では、4人のM1が研究のまとめと今後の計画を発表する。
屋久島では、シカの摂食から絶滅危惧植物を守るために設置した柵の中と外の植生を調べた。経年調査をしている調査区が8つある。今回の調査では、6つの調査区を調べた。柵の中では順調に植生が回復し、絶滅危惧種も確実な同定が可能なサイズまで回復してきた。しかし柵の外では、柵を設置した3-5年前に比べ、さらに植生の減少が進んでいる。劇的な変化だ。
一昨日は、調査を終えたあと、低地照葉樹林内にあるヤッコソウの自生地を訪ねた。ちょうど花が咲き始めた時期だった。写真は、おしべの筒がはずれ、めしべの白い柱頭が見え始めている状態。ベルト状の葯が帯褐色に変色している。後ろ側の花はまだ雄期であり、葯が新鮮な黄白色である。見れば見るほど、変な花である。
ベルト状の葯には、粘着質の花粉がぎっしりと詰め込まれている。花によっては削られたように花粉がなくなっているので、何者かが花粉を運び出している。オートフォーカスがきかない暗さの中で、マニュアルフォーカスでとった写真の中には、柱頭に花粉がついていることがわかるものもあった。
やっこ状の一対の葉には、たっぷりと蜜がたまっていた。この蜜を鳥が吸いにくると、保育社の図鑑に書かれている。屋久島に住み込んで送粉生態の調査をしたYさんは、メジロが蜜を吸いに来るところを目撃されている。おそらくメジロが主要な送粉者である可能性が高いが、確かな観察記録は発表されていない。ぜひ調べてみたいものだ。