女満別は15度

日本学術振興会で、専門調査員(プログラムオフィサー)の月例会議に出席したあと、最終便で女満別に飛んだ。レッツノートの修理が終わり、モバイルカードも使えるようになったので、ここ小清水原生花園でもインターネットにアクセスできた。先月も学振POの会議後に女満別に飛んだので、あれから一ヶ月経ったことになる。卒業研究生のMさんの調査もあと2日を残すのみ。日曜日には撤収する。
東京では30度を超えていたが、女満別空港の気温は15度。涼しい。機内では、各地で34度を記録したというNHKニュースが映写されていた。日本の南北でいかに気候がことなるかを実感する。
このような経験をしていると、日本各地に住む学会の委員にメールで連絡をとるときなどに、一律な季節の挨拶を書けなくなる。「福岡ではネムノキの花が炎天下の緑に映える季節になりましたが、網走では満開のハマナスがオホーツクからの涼しい浜風に揺れていることと思います」などと書いてしまうのである。
Mさんによれば、エゾキスゲのポリネータとして有力視していたケシキスイが最近はめっきり減ってしまい、かわってキリギリスが頻繁に花に訪れて、花粉を食べているそうだ。
結局、少なくとも今年の小清水原生花園では、エゾキスゲのポリネータはきわめて少ない。昼間はケシキスイが、夜間はスズメガ類が低頻度で訪問しているだけのようだ。
ポリネータの利用度が低いために、昼も夜も咲く性質が有利なのかもしれない。開花時間が朝だったり夜だったりと変異が大きいのも、特定のポリネータによる強い淘汰が作用していないためなのだろう。
ポリネータの訪問頻度が低いと、観察者の心理としては物足りないかもしれない。しかし、エゾキスゲの開花習性を理解するうえでは、とても重要な結果が得られていると思う。