エゾキスゲはケシキスイ媒花?

yahara2008-06-30

25日(水)から再び北海道に飛び、卒業研究生のMさんが調査を続ける小清水原生花園を訪問して、エゾキスゲの観察をしてきた。
空港につくころに、オホーツク高気圧が張り出して、天気が回復した。晴れ男の面目躍如・・・のはずだった。しかし、網走近辺では、オホーツク高気圧が張り出すと海岸に雲がかかり、温度が下がるのだ。調査地についたとき、温度は約10度。カッターシャツの上にトレーナーという軽装で出かけたので、これではとても寒さに耐えられない。着替え用に持参したカッターシャツ2枚を重ね着して、何とか初日を乗り切った。
金曜からは温度が上がり、快適な調査日和となった。しかし、これといった送粉昆虫はとんと見かけない。そのためもあって、調査の焦点を開花パタンの把握にしぼった。
エゾキスゲが夜昼咲き(夕方に咲いて翌日の夕方に閉じる)というこれまでの記述は、事実と大きく異なることがわかった。夜に咲く花もあれば、昼に咲く花もある。実にいいかげん。しかも、同じ個体内の花間で、開花パタンが異なっている。いつ開花するかについては、ほとんど淘汰が作用していないように思える。
では何が送粉昆虫かといえば、チョウもガもハナバチも、まったく訪花しない。今年は送粉昆虫のはずれ年かなと考えながら、念のため柱頭をルーペでチェックしてみると、意外にも花粉がついている。しかも、花柱の側面に点々と花粉がついているので、小型の昆虫が花柱をよじのぼったように思われる。
その昆虫の正体は、どうやら写真のケシキスイである。このケシキスイは、ハマナスの花でも頻繁に見かけた。エゾキスゲハマナスは大型の花をつけるが、実は小型のケシキスイに送粉をたよっているのかもしれない。
もっとも、まだ蚊やブヨがほとんどいない時期での調査結果である。これから7月中旬にかけて、蚊やブヨが増えるそうなので、訪花昆虫の種類も増えるかもしれない。
もう一点、印象的だったのは、朝4時には明るいこと。Optio W30をエゾキスゲの花に向けて設置し、15分に1回のインターバル撮影をしたが、4時台の写真ではストロボが発光していない。つまり、ストロボなしで写真がとれるくらい明るいのである。
福岡に戻ってからは、M2のMさんのデータを見せてもらい、今後の研究計画について相談した。実にまっとうな教員生活をしていると思う。
研究指導の合間に、急ぎの事務に対応した。COEやプロジェクト研究をかかえていたころは、急ぎの事務の合間に研究指導をしていたように思う。COEやプロジェクト予算をとることも一方では必要なのだが、一研究者、一教員としては、大学院生や卒業研究生に対応する時間を長くとれる現在のほうが、明らかにハッピーである。