教育と研究のハザマ

yahara2008-07-06

今日は朝からT君の論文改訂作業に時間を割いた。得られている結果はクリアであり、全体としてとても良く書けている。考察を除いては、随分前に改訂作業が終わっている。
しかし、考察がどうもすっきりしない。いちおう関係のある論文がていねいに引用されており、ばっさり削るわけにもいかない。さりとて、このままでは本筋が見えにくい。また、過去の推定に関わる考察で、いささか強引な論理が展開されている。引用されている論文を読んだりして、考察の改訂方針を思案していると、あっという間に一日が過ぎた。
考察とは、結果から結論を導くプロセスである。したがって、結論が詰めきれていないと、うまく書けない。T君の論文の場合、結果はクリアなのだが、結論が曖昧だ。結論に至る論理の詰め方が甘いのである。
結局、明日本人と良く議論しなければ、改訂作業を完了することはできないという結論に達した。今日はこれまで。
夕方には、明日のセミナーで論文紹介をするMさんから、レジメを見て欲しいと依頼された。論文紹介のレジメを事前にチェックできるケースはめずらしい。多くの場合、前日の夕方にはまだチェックできる状態にない。少し時間を割いて、レジメを読んでよく理解でいない点をチェックし、もとの英語論文の該当箇所を読んで、解説をしたり、改訂方針のアドバイスをしたりした。
実にまっとうな教員生活を送っている。これで文句を言えば、バチがあたりそうだ。
しかし、たまには自分の研究もしたいなどと、欲張りなことを考えてしまう。
昨夜は、小清水原生花園でエゾキスゲの調査をしているMさんから携帯に電話が入った。エゾキスゲの花にカメラを向けて撮影しているビデオ映像に、めしべによじのぼるケシキスイがしっかり映ったそうだ。また、夜間のビデオ映像にはスズメガが撮影されたそうだ。これで役者は揃った。本当は、エゾナガマルハナバチにも登場してほしかったのだが、欲を言えばきりがない。アゲハ類も飛ぶようになったが、エゾスカシユリの花に訪問していて、エゾキスゲには来ないという。これは予想どおり。
袋賭け実験や柱頭サンプリングの計画について再度確認をして、電話を切った。
エゾキスゲの繁殖生態については、以前からやってみたいテーマの一つだった。このテーマもすでに私の手をはなれつつある。
私の場合、テーマを学生に出してしまうと、自分では別のことをやりたくなってしまう。監督業だけでは満足しきれなくて、自分でプレーをしてみたくなるのだ。
今日はいわゆる事務を一切しなかったので、明日以降がおそろしい。
写真はエゾスカシユリ小清水原生花園では、いまちょうど最盛期のはずだ。