トキはなぜ減ったか?

今日の午前中は、中央環境審議会野生生物部会に出席した。議題は、トキの野生復帰のために、佐渡東部の国指定鳥獣保護区を拡大する提案だった。この提案自体にとくに反対する理由はないのだが、本土から移入されて増えているホンドテンなどを駆除して生態系を管理するという計画が別途にきちんと必要である。
この機会に、トキの増殖・放鳥計画に関して、関連する文献をチェックしてみた。

しかし、どの資料を見ても、トキはなぜ減ったのか、どうすれば野生復帰が可能なのかについての明確な説明がない。そこで、会議では、自然再生事業指針に言及して、「現状認識の明確化ができていない」「どのような仮説で対策をたてているのかがわからない」という厳しい意見を言わせていただいた。
上記の「環境再生ビジョン」では、最小存続個体数を考慮して、およそ10年後に60羽のトキを定着させると書かれている。また、トキが生息できる自然環境づくりの目標として、7-8cmのドジョウが1平米に一匹以上、ヤマアカガエルの成体が10平米に一匹、あるいは・・・といった記述がある。また、森林での取組として、営巣に適した高木から500m以内に餌場がある、という目標が設定されている。
トキが減った原因が、人口学的確率性、および餌場と営巣木の減少であれば、これらの対策は妥当だろう。しかし、果たしてそうなのだろうか。
人口学的確率性が減少にどの程度影響したかに関しては、1960-70年代の個体数減少過程のデータを解析すればわかることである。会議で配布されたデータを見る限り、人口学的確率性よりも、何らかの決定論的減少要因があったのではないかと思われる。
※ちなみに、人口学的確率性を考慮して、最小存続個体数を決めるなら、60羽ではなく、60つがい(雌60羽)でなければならない。
餌不足が決定論的減少要因なら、上記の対策が妥当である。しかし、私には別の理由があるように思える。搭乗時間がきたので、またあとで。