「パッチギ!」は、わかんね。

先週の金曜ロードショウで放映されたので、録画をしておいた。これまでこの映画にまったく興味がなかったのだが、「ノラネコの呑んで観るシネマ」さんが、「ゲゲゲの鬼太郎」の脚本に対して、次のように書かれているのを読んで、少し興味を持った。

この小学生にも失笑されるような酷い代物を書いたのは羽原大介
正直言って、とても「パッチギ!」を書いたのと同一人物の仕事とは思えない。

「ノラネコの呑んで観るシネマ」さんが評価される脚本なら、一見の価値はあるのだろうと思って、録画を見た。
結論。「わかんね」「もういいよ」。
テンポは良い。退屈はしなかった。
音楽は、私の世代の琴線にふれる。「あの素晴らしい愛をもういちど」などのメロディは懐かしかったし、ちゃんと始めて聴いた「イムジン河」のメロディも、心に残った。
キョンジャ役の沢尻エリカ(はじめて見ました)は、かわいいだけでなく、しっかりした存在感があった。
キョンジャと仲良くなりたい一心で、朝鮮のことばを勉強し、フォークギターを買ってイムジン河を練習する康介の姿は微笑ましい。ずぶ濡れになって鴨川をわたってキョンジャに会いにきた康介に、「もし結婚することになったら、朝鮮人になってくれる」という問いかけるシーンは、好きだ。越えられない「河」に隔てられた恋。古典的な設定だが、やはり胸をうつ。
しかし、康介はこの問いに最後まで答えない。ラジオ番組でイムジン河を歌い終わったあと、かけつけたキョンジャに言うひとことは、なんとも即物的。シリアスなドラマを即物的なギャグで包むという手法自体はありだと思うが、それなら別のところで答を出してほしい。最後は、二人のデートで一見ハッピーに終わるが、越えられない「河」の存在を考えれば、このハッピーな関係がいつまでも続くとは思えない。
案の定、続編「Love & Peace」には、康介は登場しないようだ。
これで、「愛は世界を変える」と言われてもねえ、説得力ありませんよ。
とても矛盾を感じたシーンがあった。ラジオ番組でイムジン河を康介に歌わせようとするディレクターを上司がとめようとする。その上司に対して、「世の中に、歌っちゃいけない歌なんて、ねえんだよ!」といって、廊下に連れ出して、殴る(直接描かれてはいないが)。
「正義」を貫くためには何をしても良いのだ、という主張が感じられて、いやぁ〜な気持ちになった。
冒頭から最後まで、繰り返し登場する乱闘シーンにも、げんなりした。「もういいよ」って感じ。
対立・乱闘の背景にある事情は、説明不足。暴力団うしの抗争とどう違うのか、わかんね。世の中に、殴って良い頭なんて、ねえんだよ!
私は、「ゲゲゲの鬼太郎」と「パッチギ!」の脚本に同じ雰囲気を感じた。羽原大介という人は、話の辻褄よりも「ノリ」を重視しているのではないか。彼が用意した脚本のノリにうまく乗れる人は、映画を楽しめる。しかし、ソリがあわないと、置いてきぼりをくらう。私は、置いてきぼりをくらってしまった。