イントロダクションの書き方

昨日の午後は、大学院生の論文原稿を読んで、コメントを書いた。以下は、その抜粋である。

論文を書くうえでは、まず、次の3項目を箇条書きに整理することを薦めます。

  • (1) 結果
  • (2) 結論
  • (3) 結論の意義(セールスポイント)

そして、結論に対応する疑問文を、イントロダクションの最後の段落で書きます。結論が2つあるなら、2つの疑問文を書きます。
原稿では、次の2つの疑問文が提起されています。
(中略)
したがって、スタイル自体は、定石どおりです。しかし、これら2つの疑問文と結論がきちんと対応していません。
(中略)
最初に書く論文で、大問題に決着をつける必要はありません。論文を書くうえで大切なことは、説得力です。結果から説得力をもって主張できることは何かをよく考え、結論の意義を整理したうえで、イントロダクションを改稿してください。
イントロダクションを改稿するにあたっては、可能な限り4段落構成にしてください。もっと複雑な構成でイントロダクションを書いている論文もあります。しかし、初心者のうちは、4段落構成を薦めます。問題設定の背景説明が明快にできる場合には、3段落でも構いません。

これらは、大学院生の原稿に対して、私がいつも述べているコメントである。今回、このブログに転載することを想定して、一般的な注意点として整理してみた。このように書き残しておけば、論文を書く他の大学院生に参考になるだろう。もっと早く、このように整理してみるべきだった。
このように整理をしようと思ったのは、「これポ」を読んでからである。私には「序論折り紙」(イントロ折り紙)がピンとこなかった
※ 前回書いたように、大いに参考になったという意見もあるので、個人差があるのだと思う。したがって、私の流儀についても、参考になる人と、ならない人がいるだろう。
「序論折り紙」では、「何をやるのか」を起点にして、逆順にさかのぼって骨子を練るように推奨されている。私も大学院生に、「イントロダクションは最後の段落から書け」と指導している。「逆順にさかのぼって」という方針は、私の方針と同じである。
しかし、私は上記のように、「結論」を起点にするように推奨している。この点が、「序論折り紙」との違いである。
 イントロダクションをうまく書けずに困っている大学院生は、多くの場合、「結論」を整理できていない。しかし、「結論」が決まってからでないと、論文は書けないのである。
 「結論」を決める前にイントロダクションを書こうとすると、研究計画の時点での問題意識・問題設定を、つい文章にしてしまう。つまり、「何をやるのか」を書こうとして、実際の結論とはくい違った問題を提起しがちである。とくに、解決できていない大きな問題を提起してしまうことが多い。
 だから私は、結論を先に決めるように、繰り返し注意している。
 なお、「結論」とは、「結果」によって支持される命題である。「結論」を導くには、著者の問題意識や仮説にもとづいて「結果」を分析し、得られた「結果」から言えることと、著者が主張したいことの間で、折り合いをつける必要がある。このためには、結果の解析→暫定的な結論(=仮説)設定→結果の再解析→結論の修正→結果の再再解析→・・・という一連の作業を繰り返し、結論を収束させる必要がある。この作業が収束しないうちは、イントロダクションは書けない。
結論が明確になり、結果・結論・結論の意義が箇条書きにできたら、イントロダクションを次のような順番で書き進めるのが良いだろう。
(1) 結論に対応する疑問文を作り、これをもとにイントロダクションの最後の段落を書く。
(2) 最初の段落を書く。ここでは、多くの読者の注意をひくために、できるだけ一般的な関心を呼ぶような書き方をする。
(3) 一般的な導入(第一段落)と、疑問文として設定した具体的な問題(通常は第4段落)をつなぐ論理を考え、第2・第3段落の構成を考える。
イントロダクションの構成は、上記のコメントのように、4段落構成を推奨している。4段落の関係は、「起承転結」に対応づけると理解しやすい。つまり、「承」に相当する第2段落では、最初の段落で提起した一般的な問題を受けてより具体的な背景説明を行い、「転」に相当する第3段落で、独自の視点を提示する。
科学論文の書き方に関する多くの文献には、科学論文の構成に「起承転結」はなじまない、と書かれている。しかし、私の経験では、イントロダクションに関しては、「起承転結」の4段落構成がもっとも明快である。
「承」・「転」に相当する説明を3つ以上の段落に分けて書いている論文もある。確かに、そのほうがわかりやすい場合もある。しかし、もっと簡潔に書き直すことができる場合も少なくない。
 以上は、私の場合の定石である。我流の部分もあるに違いない。みなさんのコメントを歓迎する。