自分の良い所・悪い所

大学に入学した娘が、「自分の良い所・悪い所をA4用紙1枚にまとめなさい」という宿題を出されたそうだ。湯船につかりながら、自分ならどう書くだろうと考えていたところ、ふと妙案が浮かんだ。そこで、ふとんに入ってから、A4の裏紙に鉛筆で書きなぐったのが次の文章である。いま、病院の待合室にいて暇なので、入力しておこう。

自分の良い所と悪い所について書けという宿題をいただいた。
さて、困った。自分で良いと思っていても、他人がどう評価しているか、わかったものではない。自分ではやさしい人間だと思っているのに、実は周囲から鬼だと思われているかもしれない。その可能性を無視して、自分の美点を書き連ねるほど私は無神経ではない。そこで自分の特技と苦手な点について書いてみる。
私の特技−それは言葉の連なりに関する探索能力とでも言おうか。あるとき後輩に、こんなクイズを出された。次の言葉に続く3文字の言葉をあててみなさい−「おこし」。
私はこの言葉を聞いただけで、「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」「・・・」という7つの言葉がすべてわかった。我ながらあきれた能力である。多くの人は、「おこし」の次が「につけ」だと聞いても、その次の言葉がわからないものだ。
では、言葉について万能かといえば、そうではない。
昔、人気クイズ番組で、シャッフルクイズというものがあった。意味のある言葉をならべかえて、別の意味のある言葉を探すクイズだ。私はこのクイズが苦手だった。
たとえば「みといずみ」―水戸泉という力士の名前だ。クイズ番組では、この言葉を見せたあと、画面で5つの文字をぐるぐるまわす。私は目がまわって、さっぱり答えがわからない。制限時間が迫る。ピッ、ピッ、ピッ、ピ――。
正解は、「いとみみず」。おお、なるほど。
というわけで、私は言葉の連なりを探索するのは得意だが、文字の連なりを探索するのはかなり苦手である。
結局、人の能力というのは多様なものだと思う。そして、多様な能力がひとつに組み合わされて一人の人格を作っているのだから、その多様性をひとつひとつの要素に分けて、これは良い所、これは悪い所と仕分けをするのは、味気ない話ではないだろうか。
しかし、これでは宿題の答えにならない。そこで、最後に私なりの答えを書いてみよう。
私の良い所−それは、お題をいただいたとき、ひねくれた答えを書くところだ。さて、私の悪い所はなんだろう−それは、実はついまじめに答えを考えてしまうところなのである。

このような文章の構成を考えるのは、楽しい。楽しんでレポートを書く、遊び心のある学生がたくさんいたら、教官稼業ももっと楽しいだろうと思う。しかし、私とて、大学入学したてのころに上記のような文章が書けたかといえば、そんなことはない。年をとり、経験を積むなかで、遊び心を育ててきたように思う。
さて、今日は環境省の報告書のしめきり。遊んでいる余裕はないのだが、風邪の症状が悪化したので病院に来ている。のどがヒリヒリする状態なので、正確な診断を受けて、的確な措置を講じたほうが良いと判断した。昼すぎには出勤して、報告書を5時までに環境省に送信する予定である。