暖冬の意味

今年の冬は、東京でも福岡でも、ついに雪が降らなかった。記録的な暖冬である。
おかげで、地球温暖化を疑う人はずいぶん減ったようだ。IPCC第1作業部会が「温暖化の原因は人為起源」とほぼ断定したことに対しても、以前ほど批判的な意見が聞かれない。
しかし、今年の暖冬が地球温暖化のせいだと考えてしまうのは、科学的ではない。
気象庁の発表によれば、今年の冬の平均気温は、気象庁が統計を開始した1899年以降の最高値タイ記録だそうだ。つまり、今年と同じ程度に暖かな冬が以前にもあったということだ。しかもそれは、1949年のことである。
もとより年平均気温は、非常に大きな自然変動をともなっている。一方で、IPCC第1作業部会報告によれば、過去100年間の地上平均気温は0.74℃上昇したに過ぎない。1年あたり0.0074度の増加だ。地球温暖化とは、このようなゆっくりとした平均値の変化である。
日本は、もっと別の理由で温暖化している。たとえば東京都心部の年平均気温は、20世紀の100年間に約3℃上昇している。グローバルな温暖化の効果よりは、ローカルな温暖化の効果がずっと大きいのだ。
私は地球温暖化を疑うものではないが、たった一度の暖冬を根拠に地球は温暖化しているとする議論に対しては、科学者として疑問を感じる。