偶然の再会
きわめて起きそうにない出来事でも、確率がゼロでない限り、起きることはある。今朝は、そんな思いを強くした。
上野の忍ばずの池のほとりを、東大に向かって歩いていたら、屋久島の知人にうり二つの人物が、むこうから歩いてくる。屋久島の山に分け入って、すばらしい写真を撮り続けていらっしゃるYさんと、顔立ちも風貌も、着ている服もそっくりだ。
しかし、屋久島ですら、なかなかお目にかかれない人物である。山に入られていることが多いので、俗世界でお目にかかることはめったにない方なのだ。そのYさんが、こんなところを歩いているわけがない。そう思って、すれちがったが、あまりに似ていたので、つい振り返ってしまった。
Yさんも、同じ思いだったようだ。振り返った者どうしが顔をあわせ、「やっぱりそうですよね」と同じことを口走った。
今日、忍ばずの池のそばの屋外ステージで開催される憲法ジャンボリーに、屋久島のNさんとともに参加されるそうだ。
そもそも、私はここを通る予定はなかった。今朝の便で上京し、川崎で開かれる自然再生ハンドブック編集のための合宿に直行するはずだった。
昨日の夕方6時ころ、台風情報をチェックしたら、昼過ぎに熊本市にいた台風がまだ熊本市上空で停滞しており、福岡市を翌朝(つまり今朝)の9時ころに通過するという予報が出ていた。なんと、私の搭乗予定便が離陸する時間である。委員長の私が出席できないリスクは、回避しなければならない。あわてて研究室を出て、7時15分の便に飛び乗った。資料のプリントを用意する時間がなかったので、昨夜は上野に泊まり、プリントを準備するために、東大鷲谷研に向かうことにした次第である。
鷲谷研に10時に訪問する約束をメールでとったので、やや遅めにホテルを出て、てくてくと忍ばずの池のほとりを歩いていたのだった。
数々の偶然が重ならない限り、起きるはずのない出来事だった。
忍ばずの池のハスはちょうど美しく咲いていて、クマバチが訪問していた。この現場を見ることができたのも、またもうひとつの偶然だった。
これから川崎に向かう。