ポスドク・ミーティング

今日は、1時限目に「生態学I」(1年生向けの専門科目)の試験をして、2時限目にはポスドク・ミーティングの準備。3時限目は、宮崎県北川町家田・川坂湿原の自然再生事業に関する打ち合わせ、4時限目は、第一回目のポスドク・ミーティング。夜は、河川生態学術研究会の講演準備。今日締め切りの講演要旨をさきほどメールで事務局に送り、地下鉄に飛び乗った。いま、地下鉄車中である。
今日は、ポスドク・ミーティングについて、書いておこう。研究室には現在5名のポスドクがいる。これまでは、ポスドクだけのミーティングを持ったことはなかった。ポスドクは大学院教育を終え、学位を取得した研究者なので、自己責任の下で、できるだけ自由に研究してほしいと考えてきた。しかし、現実には、自己責任に任せるだけでは、論文執筆が遅れ気味になる傾向がある。そこで、月例ミーティングを持ち、論文執筆作業について互いにチェックしあう場を設定することにした。せっかく5人もポスドクがいるのだから、もっと切磋琢磨して、業績をあげてほしい。
一方で、私が多忙を極めているため、論文原稿を預かりながら、迅速に対応できないという、情けない状況も生じている。仕事の仕方を変えて、論文原稿をレビューする仕事にもっと時間を割くようにしなければならない。そのためには、私でなくてもできる仕事をみんなで分担して、チーム全体のパーフォーマンスをあげるほうが良い。それはわかっていたのだが、これまで敢えてその選択を避けてきた。自分で負った責任は、自分で果たすことを原則にして生きてきた。しかし、このやり方を続けることで、かえって周囲に迷惑をかけてしまう状況が顕在化してきた。情けないとは思うが、ポスドクを何人も雇うことが可能な規模の研究費を受けた結果、それに付随する責任をひとりで背負いきれなくなってしまった。報告書を書いたり、ヒアリング用の資料を作ったりするような作業は、できればポスドクにさせたくないと思ってきたが、私がこれらの作業に縛り付けられているために、論文の完成が遅れるようでは、本末転倒である。
また、ポスドクにとっても、プロジェクト全体でどのような仕事があり、どのようなマネージメントが必要なのかを体験することは、将来のために必要な体験かもしれない。もっとも、このように考えるのは、私の居直りかもしれない。
国全体での研究開発予算が増加し続けている中で、パーマネント・ポストは増えていない。ポスドクというポジションが政策的に増やされ、現に私の研究室にも5人いる。不安的で、恵まれない待遇の下でも、研究への意欲を持ち、能力もある若い世代に対して、私たちの世代はどう対処すべきなのか。
大型の予算を取り、ポスドクを雇い続けようとするのは、教授のエゴか。それとも、若手への支援なのか。悩みは尽きないが、今日のポスドク・ミーティングでは、しっかり論文を書いて、来年以後も研究が続けられるように協力しようと呼びかけた。
私にとっては、大きな方針転換である。