どうしてこんなにいろんな植物があるのだろう?

九大新キャンパスでは、造成工事のときに、二次林の林床を1.4m×1.4m×約30cm(深さ)のブロックに切り取って、盛り土面に移植した。移植された約4000ブロックのうち、509ブロックについて、2002年から継続的に種の消長を調査している。いま、この調査の2005年分のデータをせっせと入力している。
2月7日に、環境技術開発等推進費の中間ヒアリングがあり、そこで報告するためである。他の調査結果はすべてパワーポイントスライドにまとめた。あとは、林床移植地での5年間の変化のグラフ1枚を加えるだけである。
データ入力とはいえ、なかなか人まかせにできない部分がある。植物をよく知っている者でないと、野帳の記入ミスが判断できないし、思わぬ入力ミスも生じる。植物に詳しいT君に懇願し、協力を得て、2人で作業をしている。
彼は今日、博士進学試験が済んだばかりである。面接試験では、I教授の猛攻を受けて、かなりめげているようだ。こういうときは、入力作業で気分転換するのも良いかもしれない、などと考えるのは、明らかに私の勝手である。
入力は単純作業だが、実際に自分で調べたデータであり、さほど苦にならない。調査地の環境も、個々の植物の特徴・性質も頭に入っているので、ときどきアイデアが浮かぶ。
それにしても、どうしてこんなにいろんな植物があるのだろう?
わずか509ブロックに、約300種の植物が見られる。300種というのはなかなかの数である。これらをきちんと見分けて、調査に対応できる人材は、九大に数名しかいない。
今日アップロードされた竹中さんの講演要旨によれば、植物の多種共存の機構を野外データから探る道は、なかなか厳しい。

このモデルを使って,繁殖の時間変動によって多種が共存している場合に特有のなんらかのパターンが見いだせないか検討した.そうした指標があれば,個々の森林で機能している共存メカニズムを特定するのに役立つからである.しかし,確率的な変動に埋もれることなく抽出できるような適当な指標を見いだすことはできなかった.

決定論的な要因が作用していても、その効果が弱ければ、容易に確率的な変動に埋もれてしまうのだ。だから、中立モデルが結構良い近似を与えたりする。
この事情は、分子進化の研究が直面する問題によく似ている。
私の予想では、2002年と2005年のデータを比較すれば、ある違いが浮かび上がるはずなのだが、さて予想はあたるだろうか。
入力のペースからすると、この判断がつくのは、明日の今頃になりそうである。