"もう*は*ない"

TAKENAKA's Web Pageにならって、"もう*は*ない" でググってみた。確かに、「もうこれは○○しかない」という表現がぞろぞろと引っかかる。よくもまあ、これだけ多様性があるものだ。
いくつかに分類してみる。
<決意を固める表現>

  • もうこれは行くしかない

英語に訳せば、There is no choice other than to go、だな。以下はこの系列の表現。

  • もうこれは信じるしかない
  • もうこれは諦めるしかない
  • もうこれは任せるしかない
  • もうこれはほっとくしかない
  • もうこれは野宿しかない
  • もうこれは結婚しかない
  • もうこれは逃げるしかない
  • もうこれは別れるしかない
  • もうこれは死ぬしかない

ここまでくると、悲壮感がただよってくる。

<単なる強調表現>

  • もうこれは笑うしかない

英語に訳せば、There is no other way than laughing at it、だろう。笑っちゃいけないけど、これを笑わずしてどうする、という強調表現である。以下はこの系列の表現。この例のほうが、多い。

  • もうこれは寝るしかない

この英訳は、There is no better way than sleeping。

  • もうこれは観るしかない
  • もうこれは楽しむしかない
  • もうこれは遊ぶしかない
  • もうこれは驚くしかない

このあたりから、英訳が難しくなる。

  • もうこれは気合しかない
  • もうこれは火を吹くしかない
  • もうこれはサンマしかない
  • もうこれは萌えるしかない
  • もうこれは沸き上がるしかない
  • もうこれは立ち上がって踊るしかない

この系列は、英語に訳しにくい表現が多い。「もうこれは驚くしかない」程度でも、There is no better way than surprize、では通じないだろう。ましてや、火を吹いたり、萌えたり、湧き上がったりする気持ちは、訳しにくいなぁ。もうこれは、現代日本語独特の表現である。

すでにお気づきの方もいらっしゃると思うが、「もうこれは」という表現は、本来は「もうここは」というべきである。「もうこの場面では、・・・という道しか残されていない」という意味である。これだけ流通してしまえば、いまさら正しい使い方を説いても、無駄だと思うが、

  • もうこれはグニュウでやるしかない
  • もうこれはハグハグされるしかない
  • もうこれはあれしかない

などと書かれると、もうこれは笑うしかない(^^)。

さて、今日は懸案の仕事をいくつか片付けることができた。もうここは新酒を飲んで寝るしかあるめぇ。