流域圏研究のプロジェクトデザイン

科学技術振興調整費重点課題解決型研究、課題2−2「流域圏の持続可能な環境管理」に申請するプロジェクトの編成のために、昨夜は東大で打ち合わせをした。いま、つくばセンター行きの高速バス車中にいる。午前中は国立環境研究所で、午後は中央農業研究所で、プロジェクトデザインに関する打ち合わせをする。5時から、東京駅のすぐ近くにある九大東京オフィスで別件(屋久島などのプロジェクト)の打ち合わせだが、集まるメンバーに新プロジェクト関係者がいるので、本題がすんだあとは「流域圏」の打ち合わせになるだろう。
私は「流域圏」研究の専門家ではないが、森・河川・湿地・干潟の調査経験がある。北川のプロジェクトで、河川工学の研究者と5年以上にわたって同じフィールドで調査し、一緒に議論をしてきた。植物・動物をカバーできるし、実はプランクトンも付着藻類も好きである。学生時代は、しばしば琵琶湖に出かけて、プランクトンネットをひいてサンプルを京大に持ち帰り、顕微鏡をのぞいていた。ビワクンショウモの美しい形は、いまでも鮮やかに思い出せる。当時は、第3次全国総合開発計画が進められていて、その問題点について友人と議論した。当時、京大理学部生物学科の学生が中心になって、琵琶湖研究会というサークルが作られていて、私はその2代目の会長をつとめた。プランクトンのモニタリングの一方で、流域下水道に関する論文を読んだりしていた。興味本位でやっていただけなので、その経験が役立つ日が来るとは、夢にも思わなかった。
今回のプロジェクトでは、「流域圏」に関わるいろいろな分野の研究者をうまくつなぐことが重要だと思う。また、特定の「流域圏」だけではだめで、いくつかの「流域圏」を比較して、総合化をはかる必要がある。「流域圏」にはいろいろなスケールの現象があり、大きなスケールでの動態とローカルなスケールでの動態をうまく関係づけることが重要である。また、「重点課題」の解決に結びつくアウトカムを示す必要がある。
このような考えで、プロジェクトデザインを進めている。
プロジェクトデザインには、研究そのものとは違った面白さがある。それはまさに「デザイン」であって、全体としての形が整っていて、内部の関連がうまく織り上げられていて、そこに適材が配置され、ゴールが明確であることが求められる。構想力が要求される仕事である。たやすい仕事ではない。しかし、これならいける、というデザインができたときはうれしいし、そういうプロジェクトは成功する。
さて、今回もそういうデザインにたどりつけるだろうか。大きなスケールとローカルなスケールをどうつなぐかという課題に対して、まだすっきりとした展望が打ち出せないでいる。この課題が解決すれば、大きく前進できるのだが、まだ定かな答えは見えていない。