科学技術振興調整費不採択

4月6日にヒアリングを受けた、科学技術振興調整費重点課題解決型研究については、採択される場合には昨日までに積算資料作成の依頼が届くことになっている。私のところには連絡がなかったので、不採択が確定した。
「流域圏」という研究分野では、私は新参者である。その新参者の私が、これまでの「流域圏」研究の問題点をレビューし、「ホットスポット」という新たな概念を軸にすえた研究計画を提案した。これまで「流域圏」研究の本流に携わってきた研究者から見れば、どこか違和感を感じる提案だったのだろう。水・物質循環研究との連携、工学系や農学系との連携、省庁間の連携にも目を配り、バランスのとれた計画・布陣を準備したつもりだが、一方で、私のカラーを強く出した。自分ではバランスをとったつもりでも、分野の違う審査員を納得させるまでには至らなかった。
「流域圏」研究という分野のプロジェクトには、これまで生物や生態学の研究者がほとんど関っていない。今回は、「持続可能な流域圏環境管理技術の開発」という課題が設定され、「物質循環や生物生態系等のメカニズムを考慮した影響評価技術を用いて、あらゆる視点からの幅広い流域圏利用の在り方に対し総合的に評価できるアセスメント技術の実証的研究を行う」ことが公募文書でうたわれた。
そこで、従来の水・物質循環研究に加えて、「生物生態系」を本格的にとりあげた研究計画を提案した。しかし、採択には、あと一歩及ばなかった。何かが足りなかったのだろう。
とはいえ、審査員の中に面識のある研究者が一人もいない状況で、新参者の私がヒアリングに残り、採択にあと一歩まで迫ることができたのだから、善戦ではあった。
今回、「あと一歩」に終わった背景には、「持続可能な流域圏環境管理技術の開発」というような大規模スケールの応用的課題に、これまで生態学者がまじめに取り組んでこなかった事情があると思う。多くの生態学者は生き物が好きなので、生き物の生息地という、「流域圏」よりももっと小さな空間スケールで研究をしている。
今回の提案では、このような小さな空間スケールの研究と、「流域圏」というより大きな空間スケールの研究をどうつなぐかを真剣に考えた。
研究費確保には結びつかなかったが、良い提案ができたと思う。私の提案が必要とされる時代が、きっと来るだろう。