雲無林雲霧林

yahara2005-11-09

メキシコと言えば、サボテンと砂漠の国という印象を持っている人が多いだろう。はじめてメコシコを訪れるまで、私もそういう印象を持っていた。
しかし、メキシコ高地には、頻繁に霧がかかり、鬱蒼とした森林に覆われている場所が少なくない。とくに、カリブ海側の斜面の2000m前後のゾーンは、カリブ海からやってくる水蒸気が結露し、日常的に雲や霧がかかる。この環境には、雲霧林(クラウド・フォレスト)と呼ばれる、独特の森林が発達している。
写真のような滝も随所にある。林縁には、ヘゴ類が林立し、まるで屋久島の低地の沢筋のような景観である。
オアハカには少なくとも5回来ているが、ルート195を通ったのは初めてである。このルート沿いの、トトンテペックという場所で、雲霧林に生えるヒヨドリバナの仲間の木本が採集されていた。青い花が美しいBartlettina属の、未見の種である。この植物が見たくて、今日はルート195を北上して、トトンテペックまで足を伸ばした。
オアハカシティを発つときは、よく晴れていたが、雲霧林帯に近づくに連れて雲がかかってきた。シエラ・マドレ・オリエンタールの南斜面を登りきり、カリブ海側の斜面にさしかかったとたんに、雲の中に突入し、霧雨が降り出した。しばらく前まで、サボテンやリュウゼツランが生えている植生だった。劇的な変化である。
写真の滝は、それからしばらくして視野に入ってきた。「山紫水明」という言葉がぴったりあてはまる場所が、メキシコにもあるのである。
私が属どころか科も同定できない奇妙なシダや、花茎の高さが1mをこえる大輪のベゴニアや、目的のBartlettinaなどを見ているうちに、時刻は夕暮れ時となってしまった。
やがて漆黒の闇と化した雲霧林の中は、深い霧で照明がハレーションをおこし、視界はたかだか数メートル。時速20-30kmで運転して、山を降りた。
それでも、昨夜よりは早く、9時半にはホテルに着いた。
数日前まで日本にいたのが嘘のようだ。地球はほんとうに狭くなった。グローバルに物事を考えなければならない時代だと痛感する。