誕生日、ハクサンボクとコバノガマズミ

今日は56歳の誕生日だ。実は、57歳の誕生日だと錯覚していた。最近、年齢に関する関心が低下し、ときどき記憶があいまいになる。そのため、年齢の記入が必要な書類を書くときには、正確を期すために「年齢早見表」(たとえばhttp://ohtakemama.com/nenrei2010.htm)を使うことにしている。今年に入ってからも、何回か「年齢早見表」を使い、「56歳」と書類に記入していた。誕生日を迎えてようやく、「あれ、もう57歳だっけ?」と不思議に思い、ウェブの「年齢早見表」を確認すると、「2010年の誕生日がまだきていない場合は年齢早見表より1歳引いて下さい」と書いてあった。そりゃ、そうだよな、と納得。
というわけで、今日から56歳になった。定年まで、あとちょうど10年だ。
誕生日には山に登りたいのだが、今日は卒業研究生のKくんと、伊都キャンパスの調査地に一緒に出かける約束をしていたので、誕生日を伊都キャンパス生物多様性保全ゾーンで過ごすことにした。Kくんは、林床移植地をふくむ、生物多様性保全ゾーンの樹木の開花フェノロジーと送粉昆虫を、デジカメを使ったインターバル撮影法で調べ一年を通じて調査することになった。「近縁な種は、開花期and/or送粉昆虫相が異なる傾向にある」という仮説を検証するとともに、送粉昆虫の利用度を評価して送粉共生系の保全対策を検討するのが目標だ。今はちょうど、ハクサンボクとコバノガマズミが咲いている。ガマズミ属に属す2種だが、私が提示した仮説に反して、2種の開花フェノロジーはほぼ完ぺきに重なっている。また、送粉昆虫相も大きく重複している(ハナアブハナムグリが主要な送粉昆虫)。いきなり反例が出てしまった。
ハクサンボクとコバノガマズミは、もともと地理分布や生息場所が違う。ハクサンボクは九州と伊豆半島を中心とする地域に隔離分布しており、おそらく最終氷期に九州南部と伊豆に隔離されていたものと推測される。沿岸地の照葉樹林の明るい林縁に生える。一方、コバノガマズミは落葉樹の多い里山の雑木林から冷温帯落葉樹林にかかて分布し、明るい林内に生える。このように、地理分布や生息場所の点でニッチ分化した種であり、伊都キャンパス内でも以前は生息場所が違っていたのだが、林床移植地ではさまざまな場所から切り取った森林ブロックを同じ斜面にランダムに配置したため、隣接した場所で2種の開花が観察される状態になった。おそらく2種の間には、繁殖干渉が生じていることだろう。
ハクサンボクとコバノガマズミの間には、オニコバノガマズミという雑種が知られている。林床移植地の2種の種子を調べると、雑種がかなり見つかるかもしれない。
なお、コバノガマズミにもっとも近縁なガマズミは、開花期が遅い。これら2種は地理分布も生息場所も似ているが、互いに「咲き分け」ている。→http://dspace.lib.kanazawa-u.ac.jp/dspace/bitstream/2297/6915/1/2005nenpou_yoshimoto.pdf
ハクサンボク

コバノガマズミ