アパラチア旅行:Blue Ridgeを経てCoweetaへ

28日は、ハイウェイ81号線を南西に飛ばして、バージニア州中部のBuchananという小さな街まで南下した。81号線と平行して、アパラチア山脈が北東から南西に伸びている。Buchananの街から少し南に(時間にして5分ほど)道をとると、そこはアパラチア山脈の山すそ。小さな渓流に沿って、カエデ属やミズキ属などの見慣れた木々が森林を構成しており、道路にはブナの実がたくさん落ちていた。大きく違うのは、ユリノキが優先していることだ。
29日は、81号線を離れてBuchananの街から南にアパラチア山脈を登り、稜線沿いのBlue Ridge Parkwayを使って半日ほどアパラチア山脈の植生を観察した。Blue Ridge Parkway沿いには、ブタクサもあって、F君の材料も入手できた。ブタクサは、岩質の、土壌の浅い斜面に生えている。草丈の低い一年草という性質を考えると、納得のいく生育環境である。原産地でみるブタクサは、いかにも自然に生えていた。
一方で、日本から帰化したツルウメモドキが随所で林縁の木に這い上がっていた。黄葉も果実もきれいなのだが・・・。
Blue Ridge Parkwayに沿った温帯林の林床植生は貧困である。何らかの草食動物の摂食圧によるものだろうと思っていたら、シカが道路沿いをはねた。その後、1時間に1頭は見たので、結構な密度でいるようだ。Blue Ridge Parkwayを下るときには、「シカ注意」の道路標識があった。
81号線に戻り、南西に車を飛ばして、ノースラロライナ州アッシュビルの少し手前で宿泊。
30日は、アッシュビルから74号線を西に走り、23号線に乗り継いで南下し、ジョージア州との州境近くにあるCoweeta試験地を訪問した。森林水文学の野外試験地として有名な場所である。
New Havenからメールを送っておいたので、待機していたBarry Clintonさんがすぐに試験地の森林を案内してくれた。また、400をこえる永久調査区を管理されている奥さんに、一番近い場所にあるプロットを案内してもらった。400をこえるプロットで数十年にわたるデータの蓄積がある。実に貴重なデータである。日本から侵入した菌の影響で、アパラチア産のクリが壊滅する過程についても、詳しいデータがある。一部は論文になっているが、大部分は未発表データである。
いまは、トウヒに致命的な害を与える害虫が侵入し、トウヒの木が随所で枯死していた。
アパラチアの森林は、明らかに不可逆的な変化を起こしている。
2時半ころに、所長のJames VoseさんがワシントンDCから戻られた。九大との連携プロジェクトについて相談して、4時ころに試験地を離れた。
74号線に戻り、40号線に乗り継いで東に車を飛ばし、7時ころにConfort Innにチェックイン。
今日はこれからさらに東に進み、Durhamから85号線に入って北上する。
現在の緯度は宮崎とほぼ同じくらい。これから2日間でニューヨークまで戻る。ニューヨークの緯度は、たしか、札幌くらい。