ベトナム〜バンコク〜鹿児島

11月2−3日は南ベトナムのHon Ba自然保護区とBidoup Nui Ba国立公園を視察。4日はホーチミン市の熱帯生物学研究所で所長やスタッフと共同研究・学術交流協定の打ち合わせ。5日にバンコクに移動し、6日はタイ森林植物標本館(BKF)で、野外調査の打ち合わせ。7日に調査チームと分かれて私だけ深夜便で帰国し、8日朝に福岡に到着。今日9日は鹿児島に移動し、鹿児島大学国際トレーニングプログラムの修了式をかねた国際シンポジウムで講演しました。
南べトナムでは、あまりにも森がないのに衝撃を受けました。森林が消失しているとは聞いていましたが、まさかここまでとは。「いろは坂」のような急斜面やその上部にしか、森は残っていないという印象です。Hon Ba自然保護区は、600mから900mまでと、1100mから1300mまでの間が日光のいろは坂のような急斜面。このため、900mより高いところでは、かなり良い森が残っています。Bidoup Nui Ba国立公園入口から東の急斜面も、渓流沿いにすばらしい森が残っています。しかし、標高の低い、地形が比較的なだらかなところには森はありません。また、Bidoup Nui Ba国立公園入口から南西、高原都市Dalatに至る約50kmの道沿いにも、自然林はありません。ところどころにある松林は植林で、林床にはほとんど植生がありません。高原に連なる緩やかな山並みは、頂上までバリカンで刈ったように森が切られ、コーヒーが植えられているか、電照菊の温室が立ち並ぶ斜面と化しています。ネットで調べたら、電照菊の生花の主たる輸出先はやはり日本でした。お葬式の生花には、べトナムなどの森を切って作られた温室の電照菊が使われているんでしょうね。日本では、多くの消費が海外での環境負荷の上に成り立っていますが、お葬式の生花までは考えが及びませんでした。まさに、百聞は一見に如かず、です。
バンコクでは、28年前に参加したタイ調査でお世話になった、チャムロン・フェンクライさんと再会しました。すっかりおじいさん。79歳だそうです。まだオフィスを持ち、標本を調べながら、タイ植物誌の原稿を書いていらっしゃいました。私もチャムロンさんの年齢まで研究を続けたいものです。やはり28年前の調査で3カ月間ご一緒した運転手(当時)のナロンさんとも、再開。夕食後の歌合戦で私が歌った歌をいまでもおぼえていてくれました。
今日は、鹿児島大学の国際シンポジウムで講演し、懇親会に出た後、ホテルにチェックインしたところです。懇親会では突然あいさつをふられ、歌を歌えとリクエストされたので、鹿児島の歌「ちゃわんむし」を披露しました。国際トレーニングプログラムに参加している留学生に聞くと、テレビのコマーシャルで聞いたことがあるという返事でした。しかし、鹿児島大学の教員には、意外にも知らない方々が多くて驚きました。テンポが良く、内容も面白い歌なので、鹿児島でもっと歌い継いでほしいと思います。
インドネシア調査でお世話になったジュニさんやエリさんとも再会。来年の調査での再再会を約束して別れました。鹿児島大学理学部のスタッフの方々は、東南アジア諸国(とくにインドネシアとマレーシア)との学術交流では、すばらしい仕事をされてきたと思います。私が現在進めているインドネシアでの野外調査は、鹿児島大学の方々がこれまでつちかわれた人的交流の成果に負うところが大です。今日の国際シンポジウムへの参加で、鹿児島大学の国際トレーニングプログラムに少しだけお役に立てたことはうれしい限りです。
明日は京都に移動して、京都賞授賞式に出席します。ブログを書かないと、体調を壊しているのではないかと心配してくださる方があって、ありがたいことです。元気で飛び回っていますので、ご安心ください。