丹沢山地のシカ管理と自然再生

神奈川県生命の星・地球博物館で開催された市民セミナー「シカと山と人の新しい関係:狩猟管理から生態系管理へ」は無事終了。100人をこえる参加者があり、盛会だった。若い参加者が多い点が印象に残った。

丹沢山地においてシカが植生にどのような影響を与えているか、それに対してどのような調査と対策が実施され、またこれから実施されようとしているかについて、まとまった話が聞けた。詳しい報告は、(たぶん)後日することにしよう。

同室の松田さんや梶さんが、温泉から戻ってきて、「おお、ブログだ、ブログだ」。この環境で、長い文章を書いているのは、野暮だろう。

もっとも印象に残った点。丹沢山地は神奈川県民にとって、きわめて重要な存在だということ。年間700万人の登山利用者がある。神奈川県の水源は、ほとんどが、丹沢山地のダムである。この2点だけでも、丹沢山地の森林の保全について、大きな関心が集まることがわかる。

このような背景があって、神奈川県では、古くから丹沢山地自然保護運動があった。シカは、丹沢の保護のシンボルだった。丹沢山地のシカは、低標高地の開発とともに、移動ルートを絶たれ、孤立した。一時は絶滅寸前の状態に至ったようだ。

そのシカを守るために、丹沢山地は1955年に県立自然公園に指定され、シカの全面禁猟措置がとられた。しかし、その後シカは指数的に増え続け、1980年代には特別保護地区でシカによる植物への影響が顕在化し、森林を退行させる要因となり、対策が必要になった。

このような経過から、丹沢のシカについては、「保護しつつ植生を守る」という方向が、真剣に追求されてきた。

1993-96年には、「丹沢大山自然環境総合調査」が実施された。この調査では、専門家と市民が協力して調査団を結成した。450名の調査員が参加したという。この調査団は、調査結果にもとづいて、県に次の2つの提言を行った。

提言1:マスタープランの策定
提言2:実行機関の設立

この提言を受けて、神奈川県は1999年に、「丹沢大山保全計画」を立案し、講演管理から土地管理までを一元的に担当する「自然環境保全センター」を設立した。

このような歴史のうえに、現在、新たな調査団が結成され、「丹沢大山総合調査」が実施されている。今回の「総合調査」では、ワークショップで調査項目を選定し、e-Tanzawaという情報ステーションで情報を統合・公開する。また、「政策検討責任者会議」が総合解析・政策ワークショップの開催を担当し、「順応型・統合型・参加型の政策提言」を行っていくそうだ。

今後の展開に、おおいに注目したい。