屋久島での2つのミーティング+2つの打ち合わせ

昨日は、屋久島町主催の「屋久島町野生動物保護管理ミーティング」に、今日の午前中は、「屋久生物多様性保全協議会 森林生態系・天然林再生部会」に出た。さらに午後には、来月開催される「屋久世界遺産科学委員会」の打ち合わせ、および「屋久島町野生動物保護管理ミーティング」で合意が成立したパイロット事業の打ち合わせに出た。どの集まりでも、屋久島町林野庁環境省・島民団体が同じテーブルにつき、ヤクシカ対策や森林管理のあり方について議論をした。これは、画期的なことである。
屋久島では、関係者が「譲り合って」、なかなか対策に踏み出せない状況が続いてきた。そこで私を代表とする環境技術開発等推進費プロジェクトでは、実施期間中(2004-2006)に毎年現地報告会を開き、行政・島民・科学者間の連携の可能性を追求してきた。プロジェクト終了後、2007年11月17日には、行政向けのプロジェクト報告会を手弁当で開催し、行政による対策の実施をお願いした(http://d.hatena.ne.jp/yahara/20071115)。その後2008年には、島民のTさんら「ヤクタネゴヨウ調査隊」の申請が環境省の「生物多様性保全推進支援事業」に採択され、「屋久生物多様性保全協議会」がスタートした。一方で、「屋久世界遺産科学委員会」がやはり昨年度からスタートした。さらに、今年になって、屋久島町主催で「屋久島町野生動物保護管理ミーティング」が組織され、町のイニシアティブでヤクシカ対策についての具体的検討が始まった。3つの会議の役割を整理すると、以下のようになる。

屋久島の生態系管理に関しては、関係者が多くて、調整が大変なのだ。実は上記のほかに、「鹿児島県」がもうひとつの重要な関係者である。一方で、屋久町と上屋久町が合併し、「屋久島町」が誕生したので、地元での意思決定は格段に容易になった。「屋久島町野生動物保護管理ミーティング」がスタートした背景には、この事情がある。今回の「屋久島町野生動物保護管理ミーティング」では町長が司会をつとめられた。町長は、今日の「屋久生物多様性保全協議会 森林生態系・天然林再生部会」にも出席された。
環境省では平成21年度の予算で国立公園屋久島地域におけるヤクシカ対策事業を進めており、今日の午後の打ち合わせでは、屋久島町の事業と環境省の事業の連携について具体的な相談を進めた。この会議は、林野庁林保全センター2階会議室で行い、屋久島森林管理署長も出席された。林野庁の方でも予算措置をとられており、今後は林野庁との連携も進むものと期待される。
プロジェクト終了後の3年間で、屋久島町環境省林野庁がそれぞれの立場で予算措置をとり、対策実施に向けて検討をはじめ、一緒のテーブルについて協議するところまで来た。この動きを後押ししているのは、島民団体(屋久島まるごと保全協会、ヤクタネゴヨウ調査隊)である。
まずはパイロット事業として、小瀬田の牧場周辺での対策を今年度に開始する。一方で、「屋久生物多様性保全協議会 森林生態系・天然林再生部会」ではワーキンググループを作り、屋久島の森づくり計画(5年後、10年後、50年後の目標)の素案を検討する。
12月18日に開催される「屋久世界遺産科学委員会」までに、これらの取組みがさらに具体化することを期待しよう。