嵐の中で野外実習

例年えびの高原で実施している理学部生物学科の野外実習では、最初の2日間に共通テーマでの実習(バッタの個体数推定と植生調査)を行ったあと、次の3日間はグループに分かれてテーマ別の実習を行っている。
今年は、テーマ別実習の3日間が、台風のために雨となった。とくに3日目の今日は、暴風圏に入ったため、外出は禁止し、室内での実習に切り替えている。
植物班は、林内と林縁(道路沿い)で、同じ種の枝の伸び方や葉のつけ方・形がどのように違うかを比較している。昨日はミズナラ・ハリギリの測定を行い、今はネジキを測定している。次はオオカメノキ。
どの種も、林縁では葉に角度をつけて強光阻害を避けている。ミズナラでは、葉が細くなっている。ハリギリでは茎頂に輪生する葉の数が増え、葉のサイズを大きくばらつかせるとともに、葉身長と葉柄長の比率を大きく変化させて、葉の重なりを避けている。
このような違いを、単純な測定によって数量化し、可塑的な変化の適応的な意味を考えるというテーマである。
私がとくに詳しい分野ではないのだが、このテーマなら、サンプルさえあらかじめ採集しておけば、室内で実習を続けることができる。
シマアメンボ班も、あらかじめ採集してきた個体を使って、室内実験を行っている。今年は台風のために、えびの高原ロッジから、「からくに荘」に避難しているため、照明が整ったたたみ敷きの和室を実験に使い、照明を操作して、複数個体を水槽に入れたときに明るい場所をとるか、暗い場所をとるかを調べている。おそらく、体サイズや、対戦の履歴などによって決まるのだろう。和室で予備実験を行ったときに、照明がもとの自生地に比べ明るすぎると考えた学生が、自分たちで思いついて始めた実験だが、なかなか面白い点に目をつけたと思う。
シカ班は、この嵐では、お手上げである。昨日午後から、室内待機の状態が続いている。トランプゲームで遊んでいたので、「課外授業」でナポレオンを教え、昨夜は11時までナポレオンをしてもりあがった。参加者した学生は、誰もナポレオンを知らなかった。コンピュータゲームが普及したために、カードゲームについての知識が乏しいようだ。
シカ班は明日の予備日に観察できそうなので、今日は終日、室内待機である。役札の数を増やすなどして、ゲームのルールを複雑にした場合に、人間にとって最適な(もっとも面白く感じる)ルールの複雑さがあるのではないか、という仮説を検証してみてはどうかとアドバイスしておいた。こちらはそれなりにまじめに言っているのだが、学生たちは、冗談だと思っているようだ。
雨は残念だが、実習は上記のように進行中である。雨は昨年より多いが、風は昨年より弱い。この分なら、停電の心配もなさそうだ。明日の予備日に、台風一過で晴れることを祈ろう。
・ ・・ここまで書いた直後に、停電した。その間、1分もなかった。なんという「絶妙」のタイミングだ(苦笑)。
・・・5分ほどで、停電は復旧。このまま台風が過ぎてくれることを祈ろう。