「ミニ地球」と“桃源郷”

中澤港さんのウェブサイトで、「ミニ地球シンポジウム平藤雅之さんの講演は面白い」と書かれていた。早速、「宇宙と地球につくる桃源郷」と題した平藤さんの講演の要旨を読んでみた。確かに、面白い。
平藤さんは、六ヶ所村の「ミニ地球」プロジェクトに参加されており、「生物・生態系のモデリングと計測制御、IT・複雑系・人工生態系技術を用いた宇宙農場・宇宙育種システムや快適な生活空間の研究」を専門とされている。
ナチュラリストの私は、「ミニ地球」という、完全に人工的に作る生態系に、心情的には違和感を感じるほうである。一方で、科学者としての私は、複雑な生態系を理解するうえで、この実験システムに大きな可能性を感じるし、ものすごく興味がある。
平藤さんによれば、「ミニ地球」プロジェクトのキーワードは“桃源郷”。

ユートピア”というと都市と工業技術がメインとなりますが、“桃源郷”といえば「自然と一緒に楽しく暮らす」というコンセプトに近くなるので、このキーワードを使っています。

要旨を読むと、このコンセプトをしっかりと実行に移されていることがわかる。読み進むうちに、ナチュラリストの私も、このプロジェクトに対して、次第に違和感を感じなくなった。
「土壌微生物がいることによって、万が一、未知の有害生物がいてもそれが爆発的に増殖することを防ぐという効果があります」とか、「人間はすぐに食べ飽きてしまうので、収穫物の多様性を増やさなければいけない訳です」など、共感できる視点が随所に書かれている。
「ミニ地球」は、生態系の性質を実験的に解明するうえで重要であるばかりか、もっと複雑な野外の生態系についての「見方」を鍛えるうえでも、大きな意義があると思った。
中澤さんがおっしゃるように、フィールドサーバには私も大きな可能性を感じる。「ソーラーパネルだけで動くようになってメンテフリーになって数万円くらいになれば画期的なんだが」というご意見にも同感。しかし、そもそもソーラーパネルがまだ高い。
九大新キャンパスの保全緑地なら、電源を確保して、「フィールドサーバ」をあちこちに設置することが可能だ。現実的なプランとして、考えてみよう。

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